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メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第787号 2023年5月26日発行)by AVCC

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女性をはじめ多様な人材を議会へ

古賀伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長

 4月に行われた統一地方選挙は、改めて多くの課題を浮き彫りにした。歯止めのかからない投票率の低下は深刻だ。投票率が過去最低となった選挙区も多く、50%割れの選挙が珍しくなくなった。無投票当選の選挙区は約25%となり、道府県議選では366ある定数1の選挙区の半数以上が無投票になった。統一地方選と言われながら2011年以降、全地方選挙に占める割合を示す「統一率」は27%台が続くこと、などである。

 女性の政治参画についても重要な課題だ。今回の統一地方選では、女性の当選者数は道府県議で14%、市議で22%、東京の区議選で36%超と過去最大になった。女性首長が増え、女性議員が4割を超える自治体も増加した。しかし、国際的には日本は女性の政治参画は大きく遅れている。22年の世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数で、日本の政治分野は146カ国中139位である。

 超党派の議員立法として18年に成立した「政治分野における男女共同参画推進法」は、国会や地方議会すべての議員選で男女の候補者数を同数に近づけるよう各政党に求めている。ただ、強制力や罰則はない。 政党の努力義務だけで政治分野のジェンダーギャップが解消されていくのは無理とのことから、候補者や議席の一定割合を女性に割り当てるクォーター制を含めたより強力なアクションが必要だと主張する識者もいる。

 地方議会は複雑で難しい課題をかかえ、その役割も増している。地域の課題や住民の身近な問題を解決していくには、政策に多様な視点が不可欠だ。議会の構成が男性ばかりでは、議論が硬直化しやすく、住民との距離も広がり、地方自治の基盤が揺らぎかねない。多様な人材が議会に参加し議論も活発になれば、議会に関心が集まり有権者の意識も変わる。地域が変われば、国の政治の潮流も変化する。

 内閣府が一昨年公表した地方議員へのアンケート結果では「議員活動を行う上での課題」として、女性が男性より特に多く上げたのが、性差別やセクハラ、家庭生活との両立だった。また、女性議員の3割が「政治は男性が行うものだという周囲の考え」を課題の一つにあげた。子育てや介護を専ら女性の仕事とみなしてきたことを含め、社会の従来の性別役割分担意識が問われている。

 一方では、女性議員を増やすだけでなく、議員活動と子育てを両立するための環境整備も重要だ。昨年7月時点の内閣府のまとめでは、全国1,741の市区町村議会のうち9割超が会議規則の欠席理由に「出産」を明記している。今後、「育児」を盛り込む動きを拡大したい。育児室を設けたり、オンライン会議を活用したりすることは、女性にとどまらず、なり手不足に悩む議会が多様な人材を受け入れることにもつながっていくだろう。

 障害を取り除き、立候補の環境を改善する取り組みを政府、議会、政党は強化すべきだ。私たち有権者も含め社会全体が意識を変えることで、女性をはじめ多様な人材を議会に送り込みたい。

古賀さん 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。

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