『人を助けるすんごい仕組み』 (西條 剛央 著)

『人を助けるすんごい仕組み』  ‐ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか

『人を助けるすんごい仕組み』 (西條 剛央 著) 

著者:西條 剛央
出版社:ダイヤモンド社
発行:2012/02
定価:1,500円


【目次】
 1.絶望と希望のあいだ ―― 南三陸町レポート
 2.「ふんばろう東日本」の拡大とインフラとしてのツイッター、
   ユーストリーム、フェイスブック
 3.「重機免許取得プロジェクト」
   ―― 陸前高田市消防団と志津川高校避難所
 4.半壊地域の苦境と「家電プロジェクト」の立ち上げ
 5.「ほぼ日」と糸井重里
   ――「西條剛央の、すんごいアイディア。」外伝
 6.多数のプロジェクトをどのように運営していったのか?
 7.「一戦必勝」を実現する組織づくりの秘訣
 8.ポスト3.11に向けた人を助ける仕組みと提言

  • ■震災被災地に「ほんとうに必要なもの」を届ける仕組みを構築

     東日本大震災の被災地に対して、今日までさまざまな民間組織が支援に動いている。その中でも最大級であり、実効性の高い支援組織として注目を集めたのが「ふんばろう東日本支援プロジェクト」だ。被災者たちが「本当に必要としているもの」を、インターネットの「つながる」システムを利用して全国から募り直接届ける、ということを基本線とした多数のプロジェクトを時期ごとに必要に応じて立ち上げ、すぐさま実行に移す。こうして2012年1月時点で約3000ヵ所以上の避難所、仮設住宅、個人避難宅に対して15万5000品目に及ぶ物資支援を成立させた。本書は、この「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の発起人であり代表を務める著者が、この「すんごい仕組み」をつくり、支援を進めていく経緯、組織運営の原則と方法等の舞台裏を明かし、実効性のある組織をどのようにつくりあげていくか、理論と実践、未来への提言をまとめたものである。

  • ■構造構成主義に基づき「状況」と「目的」を踏まえた活動を展開

     著者がこの支援組織を運営していくうえでの普遍的な原理としていたのは「構造構成主義」。それに基づいた「方法の原理」に照らせば、プロジェクトの有効性は「状況」と「目的」から規定される。つまり、「被災者支援」という目的がはっきりしていても、被災地ではその支援を必要としていない、あるいは、支援のためのツールを使用できる状態にない、といった状況があれば、プロジェクトは有効になりえない。たとえば著者らが立ち上げた「家電プロジェクト」は、自治体から仮設住宅へ寄贈される家電に「主婦業に欠かせない家電」が含まれていない、などの「状況」を踏まえたものだった。
     著者らは、プロジェクト実施にあたって、支援者と被災者双方の関心が両立し、双方が満足できる方法を模索し、探し当てる。こうした、さまざまな関心を持つ人が、それぞれの価値を見出せる「総合支援」の仕組みを構築し、それが成功していったのである。

  • ◎著者プロフィール

    早稲田大学大学院(MBA)専任講師。専門は心理学と哲学。「ふんばろう東日本支援プロジェクト」代表。1974年宮城県仙台市生まれ、早稲田大学大学院で博士号(人間科学)取得。「構造構成主義」という独自のメタ理論を創唱し、それを応用した組織運営方式による「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を立ち上げ、ボランティア未経験ながら、同組織を日本最大級のボランティア・プロジェクトへと成長させている。