『プライバシー・バイ・デザイン』  ‐プライバシー情報を守るための世界的新潮流

『プライバシー・バイ・デザイン』  ‐プライバシー情報を守るための世界的新潮流

『プライバシー・バイ・デザイン』  ‐プライバシー情報を守るための世界的新潮流 

編著者:堀部 政男/一般財団法人日本情報経済社会推進協会/アン・カブキアン
出版社:日経BP社
発行:2012/10
定価:2,520円


【目次】
 1.いま求められるプライバシー保護
 2.原典をひもとく――Privacy by Design
 3.いざ、実装と運用へ

  • ■プライバシー・バイ・デザインとは

     個人のプライバシーへの脅威がますます大きくなってきている。背景としてSNSの利用者の増加、スマートフォンの普及、クラウドサービスの利用など、新たなサービスの出現やネットワークの利用環境の変化が挙げられる。
     一方で、これらプライバシーへの脅威となりかねないサービスの増加に対抗すべく、プライバシー保護への新たな対策や取り組みも増えつつある。「プライバシー」という概念は、抽象的であるとともに個人の主観にも左右されるため、プライバシー保護のための仕組みそのものが抽象的かつあいまいなイメージとして受け止められる傾向がある。そのような主観的要素と抽象的な概念を排除するために、個々の定義だけでなくその背景や基礎となる概念、理念の明確な記述が求められてきた。そして考案されたのが「プライバシー・バイ・デザイン(PbD)」である。
     本書では、PbDの意図を明らかにし、事例を紹介しながら今後の導入や実践に向けての多くのヒントが語られている。

  • ■PbDをどのように実践すればよいのか?

     一体どのようにしてPbDを実践し、自分の企業・組織に導入したらよいのかという疑問を抱く人も多いであろう。個人情報保護担当者の中には、また厄介な仕事が増えるのかと肩を落とす人もいるかもしれない。著者は、自身のPbDとの関わりや海外および日本におけるPbDの発展を概観し次のように語っている。
     プライバシー保護に関しては立場による対立は避けられない。例えば情報の流通は自由であると考える米国と個人情報も人権の内容であると考える欧州の対立は根源的なものであり、容易には解消されない。また、当然ながら民間事業者は利益を追求し、プライバシーに関するNPO団体はより強いプライバシー保護を求める。そんな中、PbDについては多くのひとが賛意を示し、数少ない「誰からも愛される原理」となりつつある。
     PbDは順守すべきチェックリストではなく、思考やディスカッションのためのチェックポイントであり、信頼醸造のためのコミュニケーションツールとなり得る。

  • ◎著者プロフィール

    堀部 政男:一橋大学名誉教授。政府の個人情報保護検討部会の座長として個人情報保護法のグランドデザインを描いた。著書に『現代のプライバシー』(岩波書店)など多数。

    一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC):公益的な中立法人として、電子情報利活用基盤の整備、電子署名・認証制度の普及、情報マネジメント推進のための認定制度の運営などを行っている。

    アン・カブキアン:カナダのオンタリオ州情報・プライバシー・コミッショナー。1995年に、プライバシー強化技術を追求し、強固なプライバシー保護を実現する「Privacy by Design」を提唱した。