『グワンシ』 (デイヴィッド・ツェ/古田 茂美 著)

『グワンシ』  ‐中国人との関係のつくりかた

『グワンシ』 (デイヴィッド・ツェ/古田 茂美 著) 

著者:デイヴィッド・ツェ/古田 茂美
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発行:2011/03
定価:1,890円


【目次】
 1.中国理解と進出の鍵、グワンシ
 2.グワンシの、欧米や日本の人的「関係」との決定的な違い
 3.グワンシの負の部分からいかに逃れ、
   その利点をいかに活用するか?
 4.中国人社会における社会装置としてのグワンシ
 5.グワンシをいかに活用するか? 日本企業への実践的アドバイス

  • ■古来から中国人に深く根づいている行動原理の一つ「グワンシ」

     中国人と関係を築いていくうえで考慮に入れるべき重要なキーワードが「グワンシ(GUANXI)」である。グワンシは漢字で書けば「関係」。古来から中国人に自然に根づいている行動原理の一つであり、中国ではたとえ現代のビジネスの場面であっても、グワンシがうまく管理できていることが究極的に重要なことだと考えられている。  中国では、会社などの組織のルールよりも個人的な関係、すなわちグワンシのほうが優先されることがある。グワンシは組織のルールを超越する三つの独自のルールをもっている。その一つは「お互いに助け合う」。AはBを助けたから、BはAを助けることが期待される、という互恵、相互性の重視である。もう一つは「移転と拡大が可能」。友だちの友だちは友だちであるということから、ネットワークを広げることができる。最後は「利得を得てよい」。関係をつくるためにプレゼントなどの投資が必要だということだ。

  • ■嘘をつかない、ホンネで語り合える関係を築くことが重要

     日本人は、友だちのよしみで便宜をはかるように頼まれても、それが組織の利益に反する場合には受けることをためらう。しかし中国人は組織よりも友人関係を優先する。  日本における「関係」には「場」の存在が不可欠だ。個人がどのような「場」に参加し帰属しているかが信用度、信頼性を保証する。それに対してグワンシは「場」は必要としない。たとえばAとBの連携、BとCの連携があったときに、Bの保証によってAとCの連携ができる。このときBの果たす役割を「縁」と呼ぶ。中国では人と人をつなぐ「縁」が信用保証の主体となるのだ。「縁」をつくるには、時間をかけて交流し、贈与などの手段によって、互いに嘘をつかない、ホンネで語りあえる人間関係を築かなくてはならない。そこで生まれた信頼、親愛の感情は「人情」と呼ばれる。このように、日本では私的な場面に限定されることの多い関係が、中国では公的な場でも重視されるのである。

  • ◎著者プロフィール

    デイヴィッド・ツェ:香港大学商学院国際マーケティング学部長。国際マーケティング、中国マーケティングの権威であり、グワンシシステム研究の第一人者として知られる。

    古田 茂美:香港貿易発展局日本首席代表。日本市場における貿易促進活動の企画・立案・展開を統括する。著書に『中華文化圏進出の羅針盤』(ユニオンプレス)がある。