『間抜けの構造』

『間抜けの構造』

『間抜けの構造』 

著 者:ビートたけし
出版社:新潮社
発 行:2012/10
定 価:714円


【目次】
 1.間抜けなやつら
 2."間"を制すもの、笑いを制す――漫才の"間"
 3.お辞儀がきれいな人に落語の下手な人はいない――落語の"間"
 4.司会者の"間"を盗め――テレビの"間"
 5.いかに相手の"間"を外すか――スポーツ・芸術の"間"
 6.映画は"間"の芸術である――映画の"間"
 7."間"の功罪――日本人の"間"
 8.死んで永遠の"間"を生きる――人生の"間"

  • ■「間」「間抜け」をキーワードに文化や社会、人生を語る

     「間抜け」と言われてしまう人は、いつの時代にもどこにでもいる。「間抜け」とは、文字通り「"間"の悪い」「"間"を外した」人のこと。では、"間(ま)"とは何だろう?
     本書は日本独特の感覚であり、言葉では表現しにくい"間"について、お笑いタレント、映画監督等として活躍するビートたけしさんがさまざまな側面から語ったものである。
     "間"は、お笑い芸人、映画や絵画や音楽といった芸術、野球やサッカー、相撲のようなスポーツ、踊りや茶道などの芸事、さらには広く人生全般においても、決定的に重要なものである。漫才や落語では、巧みに"間"をコントロールしてしゃべらないと、客は退屈してしまい、笑いをとることができない。監督として映画を製作するときにも、編集作業での2コマ(12分の1秒)ぐらいの差が、監督の個性となって表れるという。また、映画の中では「説明しすぎない」ことによって、観客に「考える"間"」を与えるようにしているともいう。

  • ■意見を述べる、討論をするときには呼吸の"間"の取り方が重要

     たけしさんは、テレビ番組「TVタックル」の司会の経験から判明した、意見を述べるときや討論における"間"の取り方のコツについても語っている。"間"がいい人は、息継ぎのタイミングを分かっているという。息継ぎがスムーズでないと、話す内容が頭に入っていかないというのだ。また、討論において、ほかの人の話に入っていくときにも、呼吸の"間"を狙うといい。うまい人だと、否定をせずに「あなたの言う通り」と、肯定して入ってくる。相手が一瞬「うん」となり"間"があくので、そこから入って、自分の話をする。
     "間"を大事にするのは日本人の長所であるが、短所でもある。過剰に空気を読み過ぎることはイノベーションにはマイナスになるのだ。「"間"がわかる」というのは全体をうまくまとめることにはなるが、角を丸めてしまう。しかし新しいものをつくるためには、丸く収めず、既存の常識を壊すことも辞さない議論も必要なのである。

  • ◎著者プロフィール

    1947年、東京都足立区生まれ。漫才コンビ「ツービート」で一世を風靡した後、ソロとしてテレビ、ラジオの出演のほか、映画や出版の世界でも国民的人気を博す。1997年、北野武として監督した映画「HANA-BI」がベネチア国際映画祭グランプリを受賞。著書に『漫才』『裸の王様』など。