『森の力』 (宮脇 昭 著)

『森の力』  ‐植物生態学者の理論と実践

『森の力』  (宮脇 昭 著) 

著 者:宮脇 昭
出版社:講談社
発 行:2013/04
定 価:777円


【目次】
 序.30年後の「ふるさとの森」に入ってみよう
 1.原点の森
 2.始まりは雑草から
 3.日本の森の真実
 4.木を植える
 5.宮脇方式
 6.「天敵」と呼ばれた男
 7.いのちと森
 8.自然の掟
 終.タブノキから眺める人間社会

  • ■「ふるさとの森」づくりへの情熱と戦いの記録

     本書は、これまでに各地で4000万本以上の木を植えた科学者による「ふるさとの森」づくりにかける熱い情熱と戦いの記録である。
     著者が「ふるさとの森」づくりを始めたのは1970年代のことだ。長期間にわたって人間が行ってきた植物や自然に対するさまざまな干渉、近年になってからの大規模な自然開発や産業立地開発。このままでは土地本来の森は失われ、鎮守の森が消えていく。そうした強い危機感が動機となった。また、当時は水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくなどが大きな社会問題となるなど、公害問題が重要な関心事となっており、経済界もその対策に本格的に取り組もうとしていた。
     そんな中、最初に手を挙げたのは新日本製鐵である。同社大分製鉄所の植樹の取り組みは、近くの鎮守の森でのドングリ拾いからスタートした。ドングリを「ポット苗」にして植える「宮脇方式」がここから確立されていった。

  • ■古来より敬われ、「いのち」を守ってきた森

     森は、自然災害に対して強い抵抗力を持つ。とくにシイ、タブ、カシ類などの常緑広葉樹は、葉が厚く、水分を多く含み、なおかつ葉が密集しているため、火災を防ぎ、延焼を食い止める火防木の役割を果たす。また、根は深根性・直根性のため、しっかりと土壌をつかみ、少々の台風や地震や津波でも倒れない。
     著者がとりわけ愛着を持ち「ふるさとの森」づくりの中心として考えているのはタブノキだ。タブノキは古来より人々から畏れられ、敬われてきた存在である。
     江戸時代の代表的な大名庭園である浜離宮恩賜庭園では、250年以上も前に植えられた常緑広葉樹のタブノキやスダジイなどが、関東大震災や先の大戦での大空襲にも耐え、いまでも繁茂している。大正時代につくられた明治神宮の杜も関東大震災を生き抜いた。東京大空襲では本殿や社務所は焼失したが、クスノキやシイ、カシ類のおかげで全焼を免れた。都会の中の森は、市民の「いのち」を守っているのである。

  • ◎著者プロフィール

    1928年岡山県生まれ。植物生態学者。広島文理科大学生物学科卒業後、ドイツ国立植生図研究所研究員となる。横浜国立大学教授、国際生態学会会長などを経て横浜国立大学名誉教授、公益財団法人地球環境戦略研究機関国際生態学センター長。1970年代はじめからいまにいたるまで世界各国で植樹を推進する。1991年朝日賞、1992年紫綬褒章、2000年勲二等瑞宝章、2006年ブループラネット賞。著書に『木を植えよ!』(新潮選書)など多数。