『プロフェッショナル農業人』

『プロフェッショナル農業人』

『プロフェッショナル農業人』 

著 者:大澤 信一
出版社:東洋経済新報社
発 行:2013/05
定 価:1,890円


【目次】
 序."達人"たちが取り組んだ日本の農業問題
 1.岩澤信夫氏の不耕起移植栽培による環境再生農業
 2.藤崎芳秀氏の「不耕起移植栽培」と「冬期湛水農法」の米づくり
 3.石井稔氏の有機栽培の米づくり
 4.新福秀秋氏のICT(情報通信技術)農業
 5.秋川実氏の企業的農業経営
 6.近藤一海氏の島原半島の専業農業
 7.長谷川久夫氏の首都圏で展開する専業農業
 終."達人"たちが示す日本農業の明日

  • ■達人たちが提示する農業再生のヒント

     TPP参加は日本の農業を崩壊させるという声をよそに、TPP恐るるに足らず、世界に負けない「儲かる農業」を実践している人たちがいる。本書はそうした"農業の達人"たち7人のケーススタディを通して、日本農業再生のための指針を示したものである。
     登場する7人のうち、4人は主に生産面でのイノベーターである。『冬期湛水不耕起移植栽培』など新しい生産技術を開発・実践して高付加価値の米づくりに成功した達人や、究極の有機栽培で"食味日本一"の評価を獲得、「1俵(60kg)10万円の米づくり」を実現した達人、またICT(情報通信技術)化に取り組み、畑1枚ごとの作業効率や原価状況を細かく把握、農業の"見える化"を実現した達人もいる。他の3人は、主に会社や組合など"組織"として農業に取り組んでいる経営面でのイノベーターで、中には農業で初の株式店頭公開を果たした企業農業のパイオニアもいる。

  • ■コスト削減と高付加価値を追求するのが日本農業の目指す道

     たとえば日本農業の最大の課題である「米づくり」をどう強化するか。現在、米づくりはほぼ原価割れの状況だが、この現状を打破するために、ある達人は田んぼを全く耕さず、幼苗ではなく成長した苗を植える「不耕起移植栽培」と、収穫後に田んぼに水を張って米ぬかを散布する完全有機栽培の「冬期湛水農法」を融合させた新しい生産技術を開発し、生産コストの削減と「安全でおいしい米」という高付加価値化を実現した。

     また日本の農業は、大規模農地が少なく、農地が分散するという「零細・分散圃場」を特徴としており、それが作業効率を極めて悪いものにしているのだが、ある達人はICT化をはかり、自身の所有する313ヵ所の分散した畑1枚ごとの原価状況や作業員の作業動線を把握できるようにし、農業の"見える化"を実現している。こうした事例に見られるように、コスト削減とともに、品質本位で安全・安心な高付加価値化をはかることこそ、今後の日本農業が目指すべき道であり、儲かる農業のあり方なのである。

  • ◎著者プロフィール

    東北大学経済学部卒業後、コンサルティング会社などを経て1995年から株式会社日本総合研究所に勤務、主に第一次産業に関する調査研究、コンサルティングに従事。2011年に独立し、株式会社農業活性化研究所を設立して代表となる。現在、アグリビジネスのコンサルティングを行うほか、日本の農業再生について、講演や新聞・雑誌、テレビ・ラジオなどで積極的に発言している。主な著書に『新・アグリビジネス』『セミプロ農業が日本を救う』(いずれも東洋経済新報社)など。