『俺のイタリアン、俺のフレンチ』(坂本 孝 著)
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■高級店と立ち飲み居酒屋を組み合わせた斬新なコンセプトで成功
中古書籍販売大手・ブックオフの創業者である坂本孝氏は、同社会長職を退いた後、2011年9月、東京・新橋に「俺のイタリアン」というユニークなレストランを開店する。同店はすぐに人気店となり、さらに「俺のフレンチ」などの系列店を展開し、すべて大成功を収めている。本書は、同店オープンに至る経緯を坂本氏自身が振り返り、そこに込められた起業精神や経営哲学について語ったもの。アイデアの生み出し方、コンセプトの発見、人の活かし方など、起業や経営の実践的なヒントを与えてくれている。
「俺の○○」シリーズのコンセプトは、立ち飲み屋のスタイルと値段で、高級レストランと同じ味を提供すること。著者たちは、様々な飲食店を視察するなかで、不景気でも繁盛している業態が二つあることに気づく。「立ち飲みの居酒屋」と「ミシュランの星付きレストラン」だ。「この二つをくっつけてしまえ!」と閃いたことがすべての始まりだった。 -
■料理人に裁量権を与えることによってモチベーションを高める
仲間の一人、元証券マンの安田道男氏の試算により、客の回転数が上がれば、原価率60%であってもかえって利益が出やすい(高級店は18%ほど)ことがわかり、本格的な開店準備がスタートする。社用族が少なく景気の影響を受けにくい新橋で物件を獲得。店の内装は極力シンプルにし、その分の費用は材料費に回すことにしたのだ。
当初のもくろみ通り、高級店の経験のある一流シェフを料理人として迎えることに成功する。当初は、3万円のコース料理を作っていたシェフに客単価3000円の料理を作ってもらうのは困難と思われた。しかし著者は、高級店の料理人には、自分の裁量で腕を振るう機会が少ないことに目をつけた。そこで、「俺の○○」では、各店舗の料理人にメニューやレシピなど、できうる限りの裁量権を与えた。しかも、店舗間で互いに切磋琢磨することにより腕を磨くこともできる。客も料理人も、どちらも幸せになれるビジネスモデルなのだった。 -
◎著者プロフィール
俺の株式会社代表取締役社長。1940年甲府市生まれ。オーディオ販売や中古ピアノ販売などの事業を経て、1990年「ブックオフ」を創業。16年間で1000店舗まで拡大、書籍流通に革命を起こす。2009年VALUE CREATE株式会社設立、飲食業に参入。東京・新橋に「俺のイタリアン」を開店。大繁盛店となり、以後「俺のフレンチ」や和食バージョンも展開。1日3回転以上で原価率60%以上でも利益を出す業態を開発した。