『大事なことはすべて立川談志に教わった』 (立川 談慶 著)

『大事なことはすべて立川談志に教わった』

『大事なことはすべて立川談志に教わった』 (立川 談慶 著) 

著 者:立川 談慶
出版社:KKベストセラーズ
発 行:2013/07
定 価:1,050円


【目次】
 1.「殺しはしませんから」
 2.「俺を喜ばせろ」
 3.「潜伏期間があるのは病気だけじゃない」
 4.「努力はバカに与えた夢」
 5.「売れれば売れるほど孤独になる」

  • ■談志師匠についた厳しい修業時代に学んだ人生訓を語る

     江戸時代からの徒弟制度が残る落語界の中でも、故・立川談志氏が立ち上げた「立川流」はとくに弟子に厳しい修業を課すことで知られている。本書では、9年半にわたる前座修業など長きにわたり談志氏に師事し、真打ちにまで登りつめた立川談慶氏が、師匠とのエピソードとともに、修業生活の中で学んだ教訓、人生哲学を語っている。
     落語家として入門した弟子は前座、二つ目、真打ちと昇進していくことになるが、談志氏は、前座には一切個性を認めなかった。個性とは周囲の人たちとの信頼関係があってこそ認められるもの、前座時代はその信頼関係を築く期間だ、というのが同氏の考え方なのだ。談志氏は前座の弟子に「俺を喜ばせろ」と言い放ち、しばしば「無茶ぶり」をした。それは「立川談志という強烈な個性を持つ個人を快適にできないで、日本中の人々を魅了することなどできない」という談志氏独自の考え方によるものだと談慶氏は読みとっている。

  • ■「無茶ぶり」への対応を将来の可能性の広がりに結びつける

     談志氏の「無茶ぶり」には、たとえばこんなエピソードがある。談慶氏(当時の高座名は立川ワコール)に向かって突然「タバコをもらって来い」と命令する。自販機で師匠の好みの銘柄のタバコを買っていくと「買ってこいと言ったのではない」と叱りつけられることになる。誰でもいいから「タバコをタダでもらう」ことによって、その人との面白いつながりができる可能性がある、というのが師匠の小言の主旨だった。また、「『いろは』を覚えてこいと言われて『いろは』しか覚えてこない弟子は絶対に昇進させない」とも言ったという。無茶ぶりを理不尽ととらえ渋々言うことを聞くのではなく、いかに自分のオリジナリティに結びつけるかが、将来の可能性につながっていくのだ。
     著者は、こうしたことは他の業種・職種でも応用できるとしている。すなわち顧客や上司からの無理難題に応えることを「自己の問題処理能力の回路増設」と捉えればいい、ということだ。

  • ◎著者プロフィール

    落語家(立川流真打ち)。1965年生まれ。長野県上田市(旧丸子町)出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社ワコール入社。3年間のサラリーマン生活を経て91年、立川談志に18番目の弟子として入門。前座名は会社の承諾を得て「立川ワコール」に。2000年に二つ目昇進、談志により「立川談慶」と命名される。05年、真打ち昇進。アカペラグループINSPiとのコラボライブ「アカペラ落語」など多彩な活動を展開している。