『すらすら経理実務』 (野田 弘子/前田 邦宏 著)
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■実際の経理の現場で役立つ知識を「基本」から解説
企業を取り巻く近年の環境の変化は、経理の分野にも大きな影響を与えている。ITの普及により、経理実務はもはやシステム抜きには考えられなくなっているし、債権回収方法も、現在では手形よりファクタリングなど新しい方法が広がってきた。さらにある程度の規模以上の企業では、不正やミスを防ぐための仕組みである内部統制が要求され、経理の仕事は一人で完結できるものではなくなってきている。こうした状況では、いわゆる「簿記」を勉強して簿記検定に合格しても、実際に経理の現場に配属されたときにほとんど役に立たない、ということが起こりうる。
本書は、これから本格的に経理実務に携わる人たちにとって、そもそも会社とは何か、またそのなかで経理の役割とは何かという基本の考え方の理解に重点を置きつつ、実際の現場で必要となる知識、例えば会計におけるシステムの役割や留意点、実際の商習慣、日常・月次・年次決算業務のそれぞれのポイントなどをわかりやすく解説している。 -
■これからは"経営の視点を持った経理部員"が不可欠
そもそも会社とは、「利益を獲得するために、出資者から調達した資金で事業を行い、その結果獲得した利益を出資者に分配するために法律上作られた仕組み」である。つまり、会社は法人であり実在するヒトではない。そのため、株主をはじめとする利害関係者に対して、財政状態などの経営実態を、決算書などの「財務諸表」によって説明する義務を負う。しかし、いまだに決算書が読めず、経済事象を数値化するという会計こそが会社の羅針盤となるということを理解していない経営者や管理職がいる。また「指示されたことをそつなくこなす」のが経理部の仕事だと思い込んでいる経理担当者も少なくない。だが、これからの経理に求められるのは、指示を待つのではなく、自社のビジネスをよく理解した上で、自社の状況を的確に把握した数値を経営者に適宜報告・提示できる人材である。そのためには"経営の視点を持った経理部員""木を見て森を見ることのできる経理部員"を育てることがマネジメントの使命となるだろう。
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◎著者プロフィール
野田弘子:公認会計士。複数の外資系金融機関で約20年にわたり経理部長を歴任、広く財務経理業務に携わる。2006年より会計コンサルタントとして活動、2010年プロビティコンサルティング株式会社を設立、代表取締役となる。
前田邦宏:公認会計士。大手監査法人にて、製造業を中心に約10年にわたり会計監査業務およびコンサルティング業務に従事。現在はプロビティコンサルティング株式会社シニアコンサルタントのほか、会計専門学校講師を務める。