『ジャスト・スタート』 (レオナード・A・シュレシンジャー/チャールズ・F・キーファー/ポール・B・ブラウン 共著)
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■予測不能な状況で有効な“まず行動する”「クリアクション」
変化が激しく、未来が不透明な現代において、さまざまな問題を解決したり、マスに受け入れられる新しいサービスやプロダクツを生み出したりするのは容易ではない。しかしそのような状況にあっても成功を収めている「起業家」たちは大勢いる。本書では、そうした予測不能を乗り越えた起業家たちに共通する行動原理を「クリアクション」と名づけ、従来型の多くの企業や人が行う「プレディクション」と比較しながら論じている。
「プレディクション」で重視されるのは思考と分析。ビジネスの場合、あらかじめ目標を設定し、その目標実現のために必要と“予測”されるリソースをリストアップして、それらを最大限に生かす計画を立てる。収益が得られそうなターゲット、リスクが低い投資対象などが、綿密な“予測”に基づいて設定される。少し前まではこのプレディクションが常道であり効果も得られた。なぜなら未来は現在と同じであるという前提があったからだ。 -
■事前に「失っても構わない限度額」を決めたうえでチャレンジする
しかし、未来は現在とは異なり予測ができない、という状況ではプレディクションは機能しづらい。そこで、多くの起業家は「クリアクション」に基づいた行動をとる。クリアクションとは創造(クリエイション)と行動(アクション)を合わせた造語。すなわち、起業家たちは、予測するより先にアクションを起こす。
クリアクションのプロセスは(1)「欲求」(2)「できるだけ早く賢い一歩を踏み出す」(3)「踏み出した一歩から学んだことを生かす」という3段階からなる。リスク管理に関しては、プレディクションがリスクを予め回避すべく事前に分析・予測するのに対し、クリアクションでは「うまくいかなかったときに失っても構わない限度」の損害額を決めておき、その範囲内で、とにかく行動してみる。プレディクションでは予想外の出来事は忌避すべきものとされるが、クリアクションではむしろそれをチャンスととらえ、うまく利用する方法を考えるのだ。 -
◎共著者プロフィール
レオナード・A・シュレシンジャー:バブソン大学名誉学長。ハーバード・ビジネススクールで20年間教鞭をとった後、アパレル大手のLimited Brands Inc. 副会長兼営業部長を経て、2008年7月バブソン大学第12代学長に就任。現在、ハーバード・ビジネススクール(ベイカー財団記念講座)教授も務める。
チャールズ・F・キーファー:企業経営コンサルティング会社Innovation Associates Inc. 創業者兼会長。
ポール・B・ブラウン:『ビジネス・ウィーク』等経済誌の記者・編集者を経て、現在は『ニューヨーク・タイムズ』にコラムを執筆中。