『事業創造のロジック』 (金田 博之 著)

『事業創造のロジック』‐ダントツのビジネスを発想する

『事業創造のロジック』 (金田 博之 著) 

著 者:根来 龍之
出版社:日経BP社
発 行:2014/01
定 価:1,700円(税別)


【目次】
 1.出発点
 2.因果関係
 3.妥当性と正当性
 4.模倣困難性
 5.発展性

  • ■驚異的に低い弁当の廃棄率を実現する玉子屋の配送システム

     経営学をかじった人の中には、ビジネスモデル論を勉強すればビジネスの創造性が高まると思っている人がいるが、実はそうではない。理論や手法を知り、ほかの会社の事例を知ったうえで、自分なりの仮説を持って、新しいビジネスモデルを創造していく。つまり、理論や手法を「適用する」ことを目指すのではなく、理論や手法を参考にして、自分の頭で考えることが大切なのだ。本書は、ビジネスモデルの勝利によってダントツの成功を収めた会社の事例を分析し、そのロジック、すなわち「考え方」をたどって、各社の強さの秘密を明らかにしている。
     玉子屋は、事業者向け弁当の加工販売の会社で、1日に提供する弁当の数量は平均7万食。この数字は他社の追随を許さない規模である。同社が成功した理由のひとつにユニークな配送方法がある。先発組と後発組で多め・少なめと積む弁当の量を変えて工場を出発し、両者が配送途中で落ち合い、過不足分の弁当を渡すという見事な連携プレーによって弁当の廃棄率を極限まで下げているのだ。

  • ■他社の追随を許さない独創的なロジック

     玉子屋のビジネスモデル成功の要因は「1品メニュー化」にもある。材料仕入れでまとめ買いができるし、調理の効率が良くなる。さらには「容器を回収」してすべての食べ残し状況をチェック、メニュー改善に生かす。容器の再利用はコスト削減にもつながる。容器を回収に行くことで営業活動も強化される。
     玉子屋が突き出た理由は、単純な「規模の経済」の追求にはない。営業エリアを拡大して顧客数を増やすだけでは廃棄率は下がらない。玉子屋は、配送エリア拡大に伴い、工夫した配送の中継方式を確立することによって、廃棄率の低減に成功したのだ。つまり、規模の拡大をうまくロス率の低下につなげている。
     このように、「こうすると、こうなる」という因果関係が独創的な会社は、一気に抜け出す性質がある。ロジックが独創的だと他社はそのロジックを確実なものだとは思わず、追随しない。だからその間に事業を伸ばして、資源を蓄積できるのだ。

  • ◎著者プロフィール

    早稲田大学ビジネススクール教授、同スクールディレクター(総括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長。京都大学文学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、2001年から現職。経営情報学会会長、国際CIO学会副会長、CRM協議会副理事長などを歴任。主な著書に、『代替品の戦略』(東洋経済新報社)などがある。