『数学的決断の技術』(小島 寛之 著)

『数学的決断の技術』‐やさしい確率で「たった一つ」の正解を導く方法

『数学的決断の技術』(小島 寛之 著) 

著 者:小島 寛之
出版社:朝日新聞出版(朝日新書)
発 行:2013/12
定 価:760円(税別)


【目次】
 1.意思決定には4つのタイプがある
 2.学校では教わらない、“使える”確率
 3.不確実な世界を見通す意思決定法
 4.後悔を先読みする技術
 5.夢に賭けるのは、いけないこと?
 6.「論理的に考える」とはどういうことか
 7.想定外の出来事が、人を動かす
 8.混沌とした情報社会の歩き方
 9.自分の選択に自信がない人のための確率論

  • ■意思決定の基準には「期待値基準」「マックスミン基準」など4タイプがある

     私たちは仕事や日常生活において、しばしば何かを選択したり、意思決定を求められる。その選択や意思決定のやり方は人それぞれだ。本書では、確率論など、主に数学の分野でこれまでに蓄積されてきた意思決定に関する研究成果を紹介。複雑化する現代社会で“迷い”を少なくするための技術を論じている。
     意思決定のための基準には、代表的な4タイプがある。まず「期待値基準」。これは、複数の可能性を挙げてそれぞれの確率を考え、その平均値を基準とするものだ。次に「マックスミン基準」では、最悪の場合でも最低限保証される利益を基準とする。「最大機会損失・最小化基準(サベージ基準)」は、将来起こりうる事態をすべて想定し、もっとも後悔の少ない決定をするというもの。そして「マックスマックス基準」は、「もっともうまく行ったとき」をイメージした行動選択であり、もっとも楽観的でギャンブル性の高いものといえる。

  • ■ほとんどの人は厳密な数学的論理とは異なる「論理の癖」を持っている

     「論理的に考える」とは、「AならばB」という関係を積み重ねるものと解釈されることが多い。この関係が厳然とある数学的論理とは異なり、普段私たちが日常的に行う推論は、もっと曖昧であることがほとんどだ。たとえば「AならばB」を信じているときに「Aでない」とわかった場合、「Bでない」という結論に達したりする。多くの人がこうした「論理の癖」を持っていることに注意を払うべきだ。
     また、大多数の伝統的な意思決定論は「確率」をベースにしたものだが、それとは異質の主張をする学者もいる。その一つが「サプライズ」を基礎とするものだ。確率論のように予想の範囲内で推論するのではなく、想定外の事態こそが人々を動かすと考える。たとえばリーマンショックは「想定外」だったが、それが市場を動かし金融危機をもたらした。「サプライズ」が起きることを意識し、動揺する自分をもう一人の自分が冷静に観察するという訓練を続けていくことは、自らの意思決定の有効性を高めるのに役立つかもしれない。

  • ◎著者プロフィール

    帝京大学経済学部経済学科教授。1958年東京都生まれ。東京大学理学部数学科卒業。同大学院経済学研究科博士課程修了。専攻は数理経済学、意思決定理論。経済学博士・数学エッセイストとして多方面で執筆活動を続けている。著書に『数学的思考の技術』(ベスト新書)、『世界は2乗でできている』(講談社ブルーバックス)などがある。