『インドでつくる! 売る!』 (須貝 信一 著)

『インドでつくる! 売る!』 ‐先行企業に学ぶ開発・生産・マーケティングの現地化戦略

『インドでつくる! 売る!』 (須貝 信一 著) 

著 者:須貝 信一
出版社:実業之日本社
発 行:2014/03
定 価:1,600円(税別)


【目次】
1.インド進出環境と進出計画
2.インド市場と製品投入の戦略
3.インド市場と販売戦略
4.製品とブランド開発の失敗事例に学ぶ
5.生産と開発の現地化
終.日系企業インド進出の展望

  • ■世界2位の人口をもつ新興国の成長市場で成功するのに必要なのは「現地化」

     中国に次ぐ世界第2位の人口を有し、成長めざましい新興国の一つであるインドは、日本をはじめとする世界中の企業が虎視眈々とターゲットに定める巨大市場だ。本書は、そのインドで競争優位を形成するための戦略と実行プランについて、豊富な事例を紹介しながら論じている。そこからは海外進出の戦略立案のヒントのみならず、あらゆるビジネスにおける消費者ニーズのつかみ方についてのヒントを得ることもできる。
     インド市場では今なお「貧しさ」が重要な要素であり、そのボリュームゾーンには確たる「低価格」のニーズが存在する。日本企業としては、品質を維持しつつもインド人の購買意欲を削がない価格設定が必須となる。インドの消費者の正確なニーズを把握し、なおかつコストを削減するためには、徹底した「現地化」をはかる戦略が欠かせない。例えばホンダは開発のフェーズから効率的かつトータルな現地化を実践し、インドにおけるシェアを倍増させた。

  • ■女性を雇用し社会進出を促すことでスクーター市場の拡大を図る

     インドの下位市場で後れをとっていたヤマハ発動機は、他社が注目していなかった「女性」をターゲットに定め、女性向けの機能とデザインを特長とするスクーター「シグナスレイ」の開発・販売に踏み切った。その売り込みに際し、同社が実行に移したのは「女性のみで生産ラインを動かす」という斬新なアイデアだった。雇用と職業訓練を提供することで女性の社会進出を促し、女性のスクーター市場を拡大することを狙ったのだ。
     一方、インド企業タタ・モーターズが投入した激安自動車「ナノ」はインド市場で成功しなかった。失敗の理由の一つに考えられるのは、「ステイタスを気にする」というインド人の特徴に無頓着だったこと。激安車に乗ることはステイタスの面では逆効果だったのだ。また同社は「なぜ安いか」の十分な説明を怠ったため、消費者に「低価格=低品質」という印象を与えてしまった。ナノには「貧者のクルマ」のイメージがついてしまったのだ。

  • ◎著者プロフィール

    株式会社ネクストマーケット・リサーチ代表取締役。1973年北海道生まれ。1997年法政大学文学部英文学科卒業。外資系IT企業、インド関連コンサルティング会社取締役を経て、2009年8月にネクストマーケット・リサーチを設立。インドビジネスのリサーチ、コンサルティング、情報提供事業などを行う。著書に『インド財閥のすべて』(平凡社新書)。経済産業大臣登録中小企業診断士。