『世界の読者に伝えるということ』 (河野 至恩 著)

『世界の読者に伝えるということ』

『世界の読者に伝えるということ』 (河野 至恩 著) 

著 者:河野 至恩
出版社:講談社(講談社現代新書)
発 行:2014/03
定 価:800円(税別)


【目次】
序.「世界の読者」の視点
1.ひとつめのレンズ 比較文学篇
2.ふたつめのレンズ 地域研究篇
終.すべての文化は「世界の財産」である

  • ■世界の読者は「比較文学」「地域研究」の二つのレンズで見ている

     近年、「クール・ジャパン」というキャッチフレーズで、アニメやマンガをはじめとする日本のカルチャーを海外に発信していこうという気運が高まっている。本書では、こうした発信などを通じて日本文化に触れる世界の人々がそれをどのように受け入れているかを、海外における日本文学研究の最新傾向をもとに分析。自国の文化を効果的に伝えるために留意すべきポイントを探っている。
     世界の読者(日本以外のどこかにいる、日本の文学・文化と直接関わりをもたない読者)は、「比較文学」と「地域研究」という二つのレンズを使い分けて日本文化を見ている。これは文学研究の二つのアプローチであり、比較文学では、ある文学作品を言語やその国固有の文化的背景や歴史の中からではなく、もっと広い視野から、あるいは他の言語の文学との比較により分析する。逆に地域研究では、その文学作品が書かれた国や地域の言語や歴史・宗教などから総合的に理解しようとする。

  • ■日本文化の特殊性ではなく世界の文化を支えるものとして発信すべき

     比較文学のアプローチでは、日本文学を「世界で書かれている文学作品の一つ」として見る。日本的な特徴よりも文学作品としての普遍的な価値を探るのだ。
     一方、地域研究のレンズで見る場合でも、最近では日本文化を「特殊なもの」として扱う見方はされなくなってきている。とくに日本人自身によるそうした議論は、「自分たちは特別だ」というナショナリズムとして捉えられ、批判されることもある。日本文化の「日本らしさ」を探るのではなく、世界の中での位置付けや、社会学理論による説明、また日本文化そのものの多様性をそのまま追跡することなどが主流になってきている。
     比較文学と地域研究、いずれのアプローチでも、それぞれの事象の多様性を尊重しながら、他の国・地域と関連付けて考えていくことが主流になってきているのだ。日本から文化を発信する際には、世界全体の文化を支える一員としての視野を忘れずにもつことが重要といえる。

  • ◎著者プロフィール

    上智大学国際教養学部准教授。1972年静岡市生まれ。静岡県立静岡高校卒業後渡米し、ボードイン大学で物理学・宗教学を専攻。プリンストン大学大学院比較文学部博士課程修了(専攻は日本近代文学・英文学)。プリンストン大学非常勤講師、オハイオ州ウィッテンバーグ大学ティーチングフェロー、ウィスコンシン大学客員助教授などを経て現職。2012年、ライプツィヒ大学客員教授としてドイツ・ライプツィヒに滞在。