『ひとつひとつ。少しずつ。』(鈴木 明子 著)

『ひとつひとつ。少しずつ。』

『ひとつひとつ。少しずつ。』(鈴木 明子 著) 

著 者:鈴木 明子
出版社:KADOKAWA
発 行:2014/04
定 価:1,200円(税別)


【目次】
1.地道な努力で夢をつかむ
2.逆境が人を強くする
3.心の強さが技術を伸ばす
4.「いまできること」が未来をつくる

  • ■元トップスケーターが体験をもとに語る、不安を乗り越える思考

     バンクーバー、ソチの2度の冬季五輪に出場し好成績を残したトップ・フィギュアスケーター、鈴木明子選手。同選手は10代後半に摂食障害に苦しみ、そこから見事に復活した過去を持つ。2014年春に引退した同選手が自らのスケート人生を振り返った本書からは、不安や困難、自分の弱さとどう向き合い、乗り越えていくべきかについて考えるヒントを読みとることができる。
     摂食障害による1年のブランクを経てリンクに復帰した鈴木選手は、以前できていたことがまったくできなくなっていた。だが彼女はそこで開き直る。何もできなくなった今だからこそ、染みついていたよくないクセを直し、一から技を作り直すことができると考えたのだ。スケートを始めた頃に体で覚えていったことを、こんどは頭で覚えていく。何のためにこの練習をするのか、などひとつひとつ考えながら基本をさらう。その結果、時間はかかったが、発病前よりかえって自分の理想形に近づくことができた。

  • ■「しょうがないよ。これが私なんだから」をスタート地点に前を向く

     病気からの復帰のプロセスで、鈴木選手は自分の中に隙間をつくることを覚えた。それまでは完璧主義のきらいがあったが、「まあ、いいか」という部分を残すことができるようになった。「そんなこともあるよね」と柔軟に考えられるようになったのだ。
     ひとつひとつ、少しずつ。それが鈴木選手のスケート人生を象徴する言葉だという。彼女には一気に階段を駆け上がる能力は、残念ながらなかった。地道に練習しなければジャンプを跳べるようにはならない。一段一段階段を上っていく、少しずつ成長していくことに喜びを感じてきた。
     これまでできてきたことがうまくできなくなる。すべてがダメになった気がして不安に苛まれる。そんなとき鈴木選手は、不安な自分を受け入れることにしている。「たまたまできないだけ」と逃げてはいけない。「しょうがないよ、できないもの。これが私なんだから」と思えたら、そこをスタート地点にして前を向くことができるのだ。

  • ◎著者プロフィール

    フィギュアスケート選手。愛知県豊橋市出身。1985年3月28日生まれ。東北福祉大学卒業。6歳からスケートをはじめ、15歳で全日本選手権4位に。2006-2007ユニバーシアード冬季大会で優勝。2009-2010グランプリシリーズ(中国)初優勝。バンクーバー五輪では8位入賞。2013-2014全日本選手権で初優勝。ソチ五輪団体では日本のキャプテンとして出場(5位)。個人戦では五輪2大会連続の8位入賞を果たした。同年現役引退。