『センスは知識からはじまる』(水野 学 著)
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■生まれつきの特別な才能ではない「センス」を「知識」から鍛える方法を指南
芸術やデザインの分野で、あるいは「経営のセンス」のように使われる「センス」は、感覚的なものであり、生まれつきの才能のように思われがちだ。しかし本書で著者は、センスは鍛えることで誰でも身につけることが可能であると主張。鍛えるための第一歩として「知識」を蓄えることの重要性を強調している。
世の中に「誰も見たことのない、あっと驚く企画」は、実はたくさんある。だが、それらには「あっと驚くヒット企画」と「あっと驚く売れない企画」の2種類がある。著者の感覚では前者はあらゆる企画の2%ほど。後者は63%をも占める。既存のものからあまりにかけ離れた「あっと驚く企画」は、コアなターゲットに向けたもの以外、広く受け入れられることは少ないのだ。iPhoneは固定電話や携帯電話という過去にあったものをベースにしたヒット商品だ。多くの発明品がこのように過去にあった「あっと驚かないもの」の知識を前提としている。 -
■センスとは過去の知識をもとにして未来を予測するために必要とされるもの
センスを鍛えるためには、過去から学ぶことから始めるべきと著者は言う。それと同時にセンスとは、時代の一歩先を読む能力でもある。すなわち、過去の知識をもとに未来を予測することこそセンスにほかならないのだ。
ただし、蓄える知識は何でもいいというわけではない。例えば、普通のセーターを着ているけれどもセンスを感じさせるオシャレなA君がいる。その一方で、Bさんは、いつも流行の服を着ているけれど、センスがなさそうにみえる。この2人の違いは何か。A君は流行にも詳しいが、自分の体型や個性、雰囲気などを客観的につかんでいる。しかしBさんは、最先端の流行に関する知識は豊富だが、その知識は偏っており、自分についての客観的情報をもっていない。
センスの最大の敵は思い込みと主観だ。思い込みや主観に基づく情報をいくら集めても、センスはよくならない。意識的に思い込みを外し、客観的な知識を増やしていくべきなのである。 -
◎著者プロフィール
クリエイティブディレクター。good design company代表取締役。慶應義塾大学特別招聘准教授。1972年東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、1998年にgood design company設立。ブランドづくりからロゴ、商品企画、パッケージ、インテリアデザイン、コンサルティングまでトータルにディレクションを行う。主な仕事にNTTドコモ「iD」、熊本県公式キャラクター「くまモン」など。世界三大広告賞の「One Show」Goldほか国内外で受賞歴多数。