『生きる力 活かす力』 ‐自分も相手も高める(佐々木 正 著)

『生きる力 活かす力』 ‐自分も相手も高める

『生きる力 活かす力』 ‐自分も相手も高める(佐々木 正 著) 

著 者:佐々木 正
出版社:かんき出版
発 行:2014/05
定 価:1,400円(税別)


【目次】
1.生きていく
2.仕事に向き合う
3.新たな価値を生む
4.発想する力
5.「術」で終わらない
6.リーダーが考えること
7.私が関心を持っていること

  • ■若い人に伝えたい三つのこと

     人生はいろいろな問題を投げかけてくるが、ある程度の年齢になって本質が見えるものもある。本書は、電卓の生みの親であり、シャープを日本有数の家電メーカーに育てあげた100歳現役の著者が、多くの成功と失敗を見てきた経験をもとに、若い人に伝えておきたいことをまとめたものである。
     著者が伝えたいことは三つ。一つは「誰にでも、大切な役割がある」ということ。「大きな役割が与えられていない」と嘆いている人は、小さな役割を探してみよう。そうすると自分も周りも変わってきて、いつの間にか、大きな役割に出合うチャンスが増える。二つめは「価値観が違うから、価値がある」。価値観が違う人を遠ざける人がいるが、その状態から斬新なものは生まれない。むしろ積極的に会い、議論し、新しい価値をどんどん生み出そう。それには、共に創るという「共創」の思想が必要だ。三つめは「自分を高める心を、忘れない」。自分を高めることで相手も高まっていく。

  • ■ソフトバンクの創業者である孫正義氏との「共創」

     ソフトバンク社長の孫正義氏と出会った日のことを、著者は生涯忘れないという。1977年の夏、まだ少年の面影を宿した21歳の孫氏は、シャープにいた著者を訪ねてきた。風呂敷には、孫氏が開発した「電訳機(電子式翻訳機)のソフト」が入っていた。著者はそのソフトを高く評価し、2000万円で買った。それをきっかけに電子手帳や電子辞書へと発展していったのであるが、これも前述の「共創」の思想から生まれた。
     日本企業は「個性的な人材」よりも「協調性のある人材」を好む。この考え方は、全員が同じ価値観を持ち、一丸となって目標に突き進むには好都合だが、変化の時代には対応しきれない。異質な酸とアルカリを混ぜて初めて「化合物」という沈殿物が生じる。自分と似たスタッフを集めたがるリーダーがいるが、「金太郎飴」のような人間をいくら集めたところで複雑多様化した今の時代には役に立たない。「共創」は化学反応を起こし続ける職場からしか生まれないのだ。

  • ◎著者プロフィール

    電子工学の父と呼ばれる、シャープ元副社長。1915年島根県生まれ。京都大学工学部卒業。神戸工業(現・富士通)取締役を経て、シャープ(株)副社長、顧問を歴任。「経営の分かる技術者」の先駆けといわれている。現在、NPO法人・新共創産業技術支援機構理事長。米国アポロ功績賞、勲三等旭日中綬賞など内外の著名な賞を多数受賞。著書に『力強い指導者になる46の提言』(かんき出版)、『原点は夢~わが発想のテクノロジー』(講談社)など多数。