『夕張再生市長』 ‐課題先進地で見た「人口減少ニッポン」を生き抜くヒント(鈴木 直道 著)

『夕張再生市長』 ‐課題先進地で見た「人口減少ニッポン」を生き抜くヒント

『夕張再生市長』 ‐課題先進地で見た「人口減少ニッポン」を生き抜くヒント(鈴木 直道 著) 

著 者:鈴木 直道
出版社:講談社
発 行:2014/10
定 価:1,400円(税別)


【目次】
はじめに 夕張の未来は日本の未来、世界の未来
1.都庁から夕張へ
2.高齢化日本一のまちの日本一若い市長
3.自ら省みて直くんば、千万人といえども吾行かん
4.30歳市長、財政破綻に挑む
5.コンパクトシティ――適正規模のまちづくり
6.悪戦苦闘の三年半
7.見えてきた新たな可能性
再び、はじめに 人とまちには与えられた役割がある

  • ■全国で唯一財政破綻した夕張市に就任した若き市長が再生への挑戦を語る

     北海道夕張市は、かつて炭鉱の町として栄え、夕張メロンの産地や、ユニークな国際映画祭の開催地としてその名を知る人も多い。しかし今や、ほとんどの人がこの町から連想するのは、全国で唯一「財政破綻した自治体」という事実だろう。本書は、2011年に30歳の若さで就任した同市市長が、自らの地域再生への挑戦についてこれまでの経緯と現状、展望を語ったものである。
     著者は埼玉県出身で、もともと夕張とは縁もゆかりもない東京都職員だった。2007年、都の方針で破綻した夕張市に職員を派遣することになり、その一人として同地へ。2年間夕張市役所で働く。そこで知ったのは、単に借金を返すだけで地域再生やまちづくりの視点が皆無の再建計画、リストラされ給与が4割カットされた市職員、それゆえに行政サービスは全国でも最低レベルに陥っているにもかかわらず、税や公共料金の負担は最高レベルというとんでもない実態だった。

  • ■コンパクトシティ化など再生への道を拓いたのは市民の意識の変化

     派遣職員時代に知り合った知己の要請で市長選出馬を決意。市民の家を一軒一軒訪ねるなどの努力、前市長や当時の石原都知事の後押しもあり、全国最年少の市長が誕生する。
     著者は、派遣時代の経験や市民との対話をもとに41の公約を掲げ、就任後次々と改革に着手する。市役所内に、これまでの「地域再生推進室」から企画部門を独立させた「まちづくり企画室」をつくった。市・北海道・国の「三者協議」を開催するとともに、地域担当職員制度、「市長と話そう会」など市民の声を直接聞く機会を増やした。とりわけ、市の中心地区にインフラや公共施設・商業施設を集約する「コンパクトシティ計画」は他の自治体のモデルにもなりうるものだ。反対する住民には粘り強く説明を続けた。
     再生への糸口をつかんだ著者が、もっとも手応えを感じたのは市民の意識の変化だという。他力本願ではない、地域を再生する当事者としての意識が市民のあいだに芽生えたのだ。

  • ◎著者プロフィール

    北海道夕張市長。1981年生まれ。埼玉県三郷市出身。1999年、東京都庁入庁。2004年法政大学法学部法律学科卒業(都庁に勤めながら4年間で卒業)。2008年夕張市へ派遣、2010年4月東京都知事本局総務部より内閣府地域主権戦略室へ出向(同年、夕張市行政参与に就任)。2011年4月、30歳1ヵ月(当時全国最年少)で夕張市長に就任。世界経済フォーラムが選ぶ2013年の「ヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)」に選出。