『仕事という名の冒険』(樋口 景一 著)

『仕事という名の冒険』 ‐世界の異能異才に会いにいく

『仕事という名の冒険』(樋口 景一 著) 

著 者:樋口 景一
出版社:中央公論新社
発 行:2015/04
定 価:1,500円(税別)


【目 次】
1.アフリカ某国の首相に会いにいく
2.シンガポールへ「アジアの未来」に会いにいく
3.サンフランシスコの「ハングリー精神」に会いにいく
4.カンヌの世界的作品に会いにいく
5.生粋のコンピュータ・サイエンティストに会いにいく
6.ロンドンの世界的ミュージシャンに会いにいく
7.シカゴの天才少年に会いにいく
8.北京のドンに空気入れを持って会いにいく
9.ベトナムのメディア王に会いにいく
10.バンコクの、少女のようなキャリアウーマンに会いにいく
11.LAの伝説のサーファーに会いにいく
12.ロンドンの日本マニアに会いにいく
他、全28話

  • ■国内外で出会った才能や人間性に触れることで生まれた仕事観を語る

     自分の仕事が、毎日何の問題もなく平穏に過ぎるという人は、現代では少数派だろう。人によって差はあるだろうが、何かしらの困難を乗り越えながら日々の業務を遂行している人がほとんどのはず。電通の敏腕ディレクターである本書の著者は、アイデアを出し、工夫をし、新しい人と出会い、その人と仲間になり協力し合い、できることを増やしていく、といった仕事のプロセスは、まさに「冒険」にほかならないと言う。本書には、そんな著者が仕事として国内外の「才能」や「人間性」に会いに行ったときに感じたこと、考えたことがエッセイ、コラムの形式で綴られている。
     シンガポールでアジアの各国の現地スタッフと仕事する中で、著者は、自分の仕事の範囲を限定せずに「一歩踏み出す」勇気の重要性に気づく。個人レベルで少しずつ仕事の領域を広げていくことが新たな価値を生み出すきっかけになる。その積み重ねで組織全体が変革していくのだ。

  • ■ワークライフバランスではなくワークとライフを同一視した「ライフワーク」を

     著者があるとき「イタリア人と仕事をしにいく」とドイツ人に言ったところ、「やめておけ」と忠告された。厳格なスケジュールを組んで仕事をすることが多いドイツ人にとって、イタリア人の仕事のしかたは「いい加減すぎる」と見なされているのだ。
     著者は、ドイツ人のような国民性でなければ、「ワークライフバランス」は成立しないと考える。「無駄なことをしない」という人生観が必要なのだ。一方、日本には「職人気質」が存在する。職人が仕事に魂をこめるとき、ワークとライフは区別されない。それらを同一視した「ライフワーク」を追求することが、日本人にとってより良い働き方・生き方への方向を生むのではないか。
     「冒険」である仕事には人間性全体が入り込むものだと著者は言う。そうであるならば、「良い仕事」を続けるためには「良い生き方」をするしかない。そこには良い人間関係、良い社会性、良い家庭人であることなど、いろいろなものが含まれる。

  • ◎著者プロフィール

    電通 コミュニケーション・プランニングセンター センター長、エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター。1970年福岡県生まれ。94年東京大学卒業後、電通入社。国内で経営戦略・事業戦略・商品開発から広告キャンペーンまでトータルにディレクションを行う。最近では発展途上国を中心に地域や国家ブランディングに携わる。カンヌ国際広告賞金賞など国内外の受賞多数。2008年より武蔵野美術大学非常勤講師(視覚伝達デザイン)。