『イノベーション・ファシリテーター』 (野村 恭彦 著)

『イノベーション・ファシリテーター』  ‐3カ月で社会を変えるための思想と実践

『イノベーション・ファシリテーター』 (野村 恭彦 著) 

著 者:野村 恭彦
出版社:プレジデント社
発 行:2015/05
定 価:2,000円(税別)


【目 次】
1.イノベーション・ファシリテーターの思想
2.フューチャーセッションの実践
3.不安、疑問に答えるQ&A

  • ■フューチャーセッションをファシリテートする実践手法を解説

     さまざまな場面で、セッション、すなわち対話による意見交換が行われることが増えている。なかでも社会的課題を検討するのに有効なのがフューチャーセッションという手法。本書では、それを仕切るイノベーション・ファシリテーターの考え方と実践方法を、フューチャーセッションの生みの親であり実践者でもある著者が詳説している。
     イノベーション・ファシリテーターには“思想”と“実践”という二つの力が必要とされる。“思想”とは、目的と理念を明確にして場づくりに臨むこと。とくにイノベーション・ファシリテーターには“思想”が重要になる。その“思想”の力とは、どんなプロジェクトにおいても適切な「問い」を立てられることにほかならない。
     イノベーション・ファシリテーターは、まず、社会的課題に直面する当事者の「想い」に耳を傾け、その本質を理解する。そして、多様な人々の参加を促すために、その「想い」を「問い」に変換する。

  • ■目的はアイデア創出ではなく参加者同士の関係をつなぎ直すこと

     「想い」を「問い」に変換するとは、どういうことか。たとえば「いじめをなくしたい」という「想い」は多くの人に共有されている。しかし「いじめをなくすには?」という問いを立てたところで、セッションには当事者やその関係者しか集まらない。NHKの教養番組で、ある回のテーマは「みんなで作る。イジメをなくす憲法」だった。この「問い」であれば、さまざまな立場の人が「憲法」作りに参加したくなる。
     著者によれば、大規模なフューチャーセッションを実施する前に、少数のコアメンバーを集め「問い」のブラッシュアップをはかるステップが必要だという。そのコアメンバー選出の段階で多様性は確保する必要がある。
     アイデアを出すこと自体がフューチャーセッションの目的ではないと著者は強調する。それよりも、ステークホルダー同士の関係性をつなぎ直すことが課題解決の近道になるという。多様な人々の相互理解と信頼を築くことが何よりも大切なのだ。

  • ◎著者プロフィール

    フューチャーセッションズ代表。富士ゼロックスを経て、企業、行政、NPOを横断する社会イノベーションをけん引するため、2012年に独立。金沢工業大学教授(K.I.T.虎ノ門大学院)。国際大学GLOCOM主幹研究員。慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。著書に『サラサラの組織』(共著/ダイヤモンド社)、『裏方ほどおいしい仕事はない!』『フューチャーセンターをつくろう』(ともにプレジデント社)がある