日本が辿る、デジタル社会の未来予想図は?
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久保田了司
一般財団法人高度映像情報センター(AVCC)理事長
霞が関ナレッジスクエア(KK2)代表
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長い人類の営みの中で、日本でのSociety 2.0農耕社会からSociety 3.0工業社会への節目は今から170年程前の「明治維新」です。この時代に渡来した外国人を驚かせたのは、当時の庶民の高いリテラシーでした。女性や子供までが「読み書きそろばん」ができたのは、識者が庶民の子供たちを指導する「寺子屋」といった自発的教育システムのたまものです。身分を問わない地域での「学び合い」という土壌が、工業社会での急速な近代化を支える人材を供給する社会の底力となったと言っても過言ではないでしょう。
一方、第二次世界大戦敗戦後僅か80年弱の営みの中で、工業社会からSociety 4.0情報社会、そしてSociety 5.0デジタル社会へと、私たちは急速なパラダイムチェンジと向き合ってきました。デジタル社会での「読み書きそろばん」にあたる「デジタル活用力」を、多くの国民は学ぶ機会があったでしょうか?残念ながら先月のメッセージfromKK2第732号で述べたように、全国の「公民館」ではインターネット環境すら整備されていない状況です。学校教育現場でも教職員のデジタル人材不足は切実で、現行業務が優先される中でデジタル人材育成の余裕はなく、GIGAスクール構想の大きなパラドックスとなっているのではないでしょうか。
徳トークン社会:ボランティアによる学び合い
デジタル人材の育成は急務ですが溜まったツケは大きく、一朝一夕には実現できません。今すぐできることは、「デジタル活用力」の高い人がデジタル活用力ボランティア(DKV)として、地域・コミュニティのデジタル弱者に対してface to faceの支援指導を行う「寺子屋」のような取り組みを実施することだと私たちは考えています。またボランティアは「無償」という概念は今日的には通用しにくく、ボランティアを行った時間がリアルな通貨(¥)ではない新しい価値(デジタル通貨)として貯まる「時間預託」という概念なら多くの人に受け入れられるのではないかと考えています。このような活動の総称を「デジタル公民館®」と名付けました。
KK2は昨年度、楽々電子塾様のご指導による「オンラインIoT道場」を開設しました。今年度は、IoT、AI、DX等への応用範囲が広い「パイソン(Python)」を習得する「IoT道場(基礎コース)」をスタートしました。初心者の自学自習を原則としていますが、分らないことがある時アドバイスが欲しい時、先達がデジタル活用力ボランティア(DKV)としてオンラインで支援する教育システムです。一般募集はこれからですが、このような地道な教育活動を積み重ね、デジタル社会の未来予想図に向き合ってまいりたいと考えています。皆さまの一層のご支援をよろしくお願いします。
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