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メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第772号 2023年2月10日発行)by AVCC

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★ 今週のメッセージは「特別寄稿」です!

「終末時計」がついに最短に

古賀伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長

地球が滅亡するまでの残り時間を示す「終末時計」の時刻が、ついに最短の「残り90秒」となった。

 この時計は1947年に、当時の米国とソ連の核兵器競争の危険性を警告するため、米国の原子力科学者会報によってつくられた。初年度は「残り7分」であり、以降地球の危険状態に警告を発してきた。人類最後の日まで最も長かった「残り17分」は、冷戦が終焉してソ連が崩壊し、核軍縮の機運が高まった1991年だ。同誌の科学・安全保障委員会での議論を経て、その時刻の修正を毎年1度行っている。1989年からは、核兵器の脅威のみならず、気候変動による地球環境や生命科学の負の側面による脅威なども考慮して決定されている。

 1月下旬、科学・安全保障委員会の一員でメリーランド大学のスティーブ・フェター教授は会見で、「核兵器のリスクは、主にロシアによるウクライナ侵攻により明確に増加した。事故や間違い、誤算が意図しない激化につながりかねない」と指摘した。ロシアのウクライナ侵攻から2月で1年が経過するが、終結の兆しもなく戦闘の長期化が避けられない見通しとなっている。ウクライナが主権国家としての存続の危機にさらされ、多くの人々の生命が奪われている。国連憲章や国際法の明確な違反であり、ウクライナの主権も無視した、あからさまな侵略行為にほかならない。二度の大戦を経てつくりあげてきた国際秩序を根底から揺るがす、常軌を逸した蛮行であり断じて容認することはできない。

 しかも、これは米欧とロシアの勢力圏の争いではなく、国際社会が認識すべきは、世界にとって共通の脅威であるということだ。世界の分断を浮き彫りにし、国際社会は東西冷戦終焉後、最も深刻な危機に直面している。大国による露骨な暴力行為を制御できなければ、法とルールに依拠する国際秩序は保てず、民主主義を著しく後退させる危機に陥る。世界秩序の将来は、ウクライナ危機への対応にかかっている。1月下旬には、米国・英国とドイツがウクライナに主力戦車を供与することを決定した。ドイツは世界最強戦車といわれる「レオパルト2」(ドイツ製)を保有する欧州各国にも提供することを認めた。言うまでもなく、ロシアの違法な侵略に終止符を打つための支援だ。しかし一方では、NATO(北大西洋条約機構)の武器供与による支援の強化は、ロシアとの戦闘を激化させ、犠牲者を増大させることは否定できない。

 国際社会の結束により、停戦の糸口を探る外交努力がさらに重要である。G7議長国と国連安保理の非常任理事国となった日本の役割の発揮を期待したい。

古賀 伸明 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。

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