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メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第804号 2023年9月22日発行)by AVCC

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ハチ公 生誕100周年

古賀伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長

 東京に住んで22年。それ以前は出張で訪れる“田舎者”には、知人と待ち合わせする場所は、JR新橋駅前の「SL広場」か渋谷駅前の「ハチ公像前」しか知らなかった。

 そのハチ公は1923年生まれで、今年生誕100年を迎えるという。


JR渋谷駅ハチ公口の忠犬ハチ公像(写真ACより)

 生後約50日で東京帝国大学(現・東京大学)農学部の上野英三郎教授に飼われた。上野教授が1925年に急逝した後も、教授の帰りを待つかのように渋谷駅に通った。この逸話が1932年に新聞に記載され話題になり、全国からの寄付で1934年4月、渋谷駅前に銅像が建てられた。その翌年3月にハチ公は病死した。

 私は小学校の時、学校か公民館か定かではないが、ハチ公の映画を観た記憶がある。最近新聞報道で、2019年3月に都内在住の男性から白根記念渋谷区郷土博物館・文学館に寄贈された、1958年作成の「ハチ公物語」(白黒映画16mmフィルム)のことを知った。権利関係が不明で上映が控えられていたが、同作品を手がけた中川順夫監督の遺族の許諾を得ることができたという。

 同館で10月9日まで開催している「ハチ公生誕100年記念展」での上映が実現したと聞いたので、早速観に出かけた。映画は土曜日・日曜日・祝日に上映されており、DVDで約50分。40人の席は満席で補助椅子も使われ、若い人も結構多かった。ハチ公と飼い主だった上野教授との深い絆が描かれ、上野教授が亡くなった後も、帰りを待つハチ公の姿が映し出される。子どもの頃に見たのは、確信は持てないが、たぶんこの映画だと思う。

 帰らぬ人となった飼い主を死ぬまで待ち続けたハチ公の物語は、今日まで多くの人々の心に響き続けてきた。 国内のみならず、三重苦を乗り越え社会福祉家として活躍したヘレン・ケラーは、1937年初来日する時に楽しみにしていたのは、その忠実さに心を打たれたハチ公像に触れることだったという。また、仲代達矢氏主演で1987年に公開された映画「ハチ公物語」を、ハリウッドで2009年にリチャード・ギアを主演に「HACHI 約束の犬」としてリメイクしヒットした。昨年、ウクライナの首都キーウ近郊のマカリウで、ロシア軍に殺害された飼い主の女性を待ち続けた秋田犬を、地元メディアが「マカリウのハチ公」と報じた。

 一方、上野教授は渋谷駅を毎日使っていたわけではなかったが、なぜハチ公は渋谷駅に通ったのかという疑問の声もある。実際に犬の行動学の専門家も「ハチが渋谷駅に通うようになった最初のきっかけは、確かに上野教授を待つことだった。しかし、それだけの目的で11歳で死ぬまで7年以上も通い続けることは、行動学的に考えにくい。上野教授に会いたかったのは確かだとしても、活気があって多くの人で賑わい食べ物ももらえる、楽しい毎日の散歩ルートとしてハチは渋谷駅に通っていた。そんな可能性も考えられる。」という。

 謎や疑問が多いことも事実だろう。だが、ハチ公の行動は「永遠の友情と愛情」や「深い絆」など、現代社会の中で私たちが忘れてしまいがちな重要な価値観を思い出させてくれる。

古賀さん 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。

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