持続可能なワイン造りと多様性
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華井 弘子
一般財団法人AVCC 理事
ワインコーディネーター
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実りの秋を迎え、ワイナリーでは、コロナが5類に移行し、収穫祭やワイナリーツアーが復活し人気です。この夏の猛暑で、農作物にも影響がありましたが、ワイン用ぶどうの栽培では、高温で糖度が上がり、良質のぶどうが例年より早く収穫でき、秋の台風シーズンのリスクが避けられたことは良かったようです。
ワインの伝統国ヨーロッパでは、4~5,000年前からワインが飲まれています。日本では、1970年の大阪万博などがきっかけとなり、食の洋風化と共に世界各国のワインが日本に輸入され始め、日本で飲まれるようになったのはこの50年くらいです。私の新人時代の試飲販売の仕事では、甘口ワインは人気でしたが、渋味に慣れていない日本人の舌には赤ワインは不評でした。昨今、多様な個性あるワインが、普段の食生活にも溶け込んできたのは、想像以上の驚きです。ワインの個性は、ぶどう品種・テロワールと言われる気候や風土の環境・ワインメーカー(造り手)によって生まれる、多様な味わいが魅力です。
過去の「食と文化講座」で、ご紹介した<自然派ワイン>は、10年ほど前から注目され始めましたが、最近では、伝統国だけではなく日本でも人気が高まっています。オーガニックぶどうから自然酵母で発酵させ、濾過をせず(又は最小限に)、酸化防止剤など極力使用しないので、以前は品質のバラつきなどが懸念されていました。しかし、昔ながらの栽培や醸造を見直し、造り手の様々な取り組みで、個性ある自然派ワインならではの味わいが、評価されています。

2018年開催 『これから注目したい世界のワイン~10種の試飲から知る新トレンド~』 より
長い歴史と伝統を持つワイン造りでは、何代にもわたり、ぶどう栽培農家や老舗ワイナリーとしての家族経営も多く、多様性や自然環境に配慮した次世代に繋ぐ持続可能な取り組みが必要です。
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