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メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第813号 2023年11月24日発行)by AVCC

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即時停戦せよ

古賀伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長

 目を覆うばかりの惨状が、連日報道される。罪なき人々の血が流れ、日々奪われる命。理由も分からず死んでいく子供たち。

 ユダヤ教には1週間にわたる「仮庵(かりいお)」の祭りがある。この祭りはエジプトで奴隷にされたユダヤ人の祖先が、預言者モーゼに率いられてエジプトを脱出し、神から与えられた約束の地「カナン」に向かう際に、荒野で天幕を張って休んだとされている故事にちなんだものである。「仮庵」の祭りの最終日は一切働いてはいけないことになっており、その翌日も安息日として働けない。このため、イスラエル軍兵士の多くが自宅に帰ってきていた。その日(10月7日)に、パレスチナ自治区ガザを拠点とするイスラム組織・ハマスがイスラエルを襲撃し、外国人を含む200人強の人質をとるという暴挙にでた。約1,400人の命が奪われたことに対し、イスラエル軍はガザへの激しい軍事作戦を開始した。戦闘は激化し犠牲者数が増加の一途をたどっている。

 そもそもガザは1948年のイスラエル建国により、故郷を追われた人々が人口の多数を占める地域だ。2007年以降は周囲を封鎖され、人の移動も物の運搬も厳しく制限され「天井のない監獄」と呼ばれている。イスラエルによる占領やガザ地区の封鎖が続いてきたことが、今回のような悲劇を招いたという識者も多い。ハマスの襲撃により、多くのイスラエル市民が犠牲となった行為を決して許してはならない。しかし、それに対して5,000人以上の子供を含む1万人を超える人々を殺害し、さらなるガザへのイスラエル軍の報復攻撃は「自衛」の域を超えている。

 国際法は自衛権の行使を認めているが、それには制約がある。国家が自衛権を行使する際の要件として、武力行使以外に手段がないという「必要性」と、受けた攻撃に対する武力行使の規模と不均衡にならないようにする「均衡性」を定めている。また、軍人・軍事施設への攻撃は認めても、民間人・民間施設への攻撃は認めない「区別原則」を基本としている。市民に多大な犠牲を出しているイスラエルは、自衛権の行使を逸脱した過剰攻撃であり、国際法に違反するばかりか、紛争の犠牲と規模を拡大している。決して認めてはならない。11月15日国連安全保障理事会は、ようやく「十分な日数」の戦闘休止などを求める決議を採択した。これまで出された停戦などを求める4つの決議案は、アメリカ、ロシア、中国が拒否権を行使し採択されなかった。多くの失われた命を思えば、遅すぎたと言わざるを得ないが、国際社会では法的拘束力がある安保理の決議は重い。

 イスラエルは直ちに攻撃を停止し、ハマスは人質を解放すべきだ。これ以上、ともに無法な暴力の犠牲者を増やしてはならない。人間同士の暴力の応酬には終わりは来ないばかりか、新たな憎しみを生む。即時停戦すべきである。あらゆる手段を使って、イスラエルへの働きかけを強めねばならない。そのための環境整備に向けて、国際社会は一致して行動する責任がある。

古賀さん 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。

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