メッセージの音声版をYouTubeで公開中

メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第822号 2024年1月26日発行)byAVCC

無料で学べるKK2Webサイトの動画掲載本数 1,996

災害多発の日本 防災の再点検を

古賀伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長

 新年(2024年)が穏やかに明けたが、夕刻一瞬にして暗転した。テレビを見ている最中、スマートフォンからけたたましい緊急地震速報が鳴る。テレビは緊急番組に切り替わり、アナウンサーが「強い揺れに警戒してください」と注意を促した。元旦午後4時過ぎに発生した能登半島地震だ。石川県で最大震度7の地震が起き、気象庁は東日本大震災以来となる大津波警報を石川県に出し、日本海側の広い範囲に津波警報・注意報を発表した。アナウンサーの口調は強くなり「すぐに逃げてください!」「可能な限り高い所に逃げてください!」「東日本大震災を思い出してください!」と異例の口調で避難を促した。2018年12月、能登空港に初めて降り立ち、能登半島の数カ所で講演によばれた時のことを振り返り、あの思い出の地の悲惨さに呆然となった。多くのお亡くなりになられた方々のご冥福とご遺族へのお悔やみ、そして被災された皆さんへのお見舞いを心より申し上げる。地震発生から約1ヶ月になろうとしているが、現在でも安否の確認がとれない人がいる深刻な状況だ。厳しい寒さの中の避難生活は過酷だろう。もちろん、あらゆる手段を使い、人命救助と被災地の支援が最優先である。

 一方日本列島では、どこでいつ地震が起きてもおかしくない。日本は災害多発国であり、今回の災害が人ごとではないことを再認識することが重要だ。今後30年以内にマグニチュード7級の首都直下地震が南関東で高い確率で起こると予想され、南海トラフ地震も切迫が指摘される。建物やライフラインの耐震性、傾斜地の住宅と土砂災害、燃え広がりやすい木造住宅の密集、避難の誘導と受け入れ体制、備蓄する物資、災害多発国であるにも関わらず海外の多くの国より劣っていると長年にわたって指摘されてきた避難所環境など、この地震で顕在化した課題を改めて共有し、克服の道筋をつける必要がある。東京都は2022年、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直した。その資料では死者は最大約6,200人、建物被害は約19万棟にものぼる。急増したタワーマンションでの高層階に取り残される住民への取り組みも急がれる。他方、地方の高齢化・過疎化は止まらず、大都市への人口集中が進んでいる。今回の被災地は少子高齢化が進み、家を再建して住み続ける難しさ、地域を継続していけるのかという問題に直面する可能性も大きい。今回の地震で災害に脆弱な日本社会全体の防災のあり方を再点検するきっかけとしなければならない。

 私たちは災害に直面すると、普段の生活が、いかに無意識に多くのものに依存しているかを実感する。被災者には誰もがなる可能性がある。今の便利な生活の成り立ちを自覚し、周りの人との繋がりや助け合いを大切にしたい。今年の干支は「甲辰(きのえたつ)」、「はじまりの年であり、芽吹きの年」「活気にあふれ、力みなぎる年」といわれている。災害を乗り越えて、新たな芽が吹き出ることを心より願いたい。

古賀さん 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。

yose yose yose yose

■発行元:一般財団法人AVCC霞が関ナレッジスクエア事務局
〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート 西館ショップ&レストラン 3F
電話:03-3288-1921 FAX:03-5157-9225

霞が関ナレッジスクエア(KK2)は学校教育や企業研修では教えていない「しごと力」をいつでも、どこでも、誰でも学べる場を提供することを目的に、一般財団法人AVCCの公益目的事業として運営しております。