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メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第826号 2024年2月23日発行)byAVCC

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クーデターから3年 早急に民主主義と平和の回復を

古賀伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長

 インドシナ半島西部に位置する国「ミャンマー連邦共和国」。「ミャンマー」と公式表示されたのは、今から35年前の1989年だ。私たちはそれ以降も旧国名の「ビルマ」を使っていた。それは、「ビルマ」から「ミャンマー」に国名を変更した軍事政権を認めていなかったからだ。「ミャンマー」と呼ぶようになったのは、2011年のテイン・セイン政権発足で軍政から民政移管が実現してからである。

 しかし、それから約10年後の2021年2月1日未明、ミャンマー国軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問や与党・国民民主連盟(NLD)幹部らを拘束するとともに、非常事態宣言を発出した。国軍は正当性を主張したが、紛れもなく軍事クーデターだ。順調に進んでいるかにみえたミャンマーの民主化は、わずか10年でとん挫した。

 それから3年が経過するが、政変前の政権トップだったアウン・サン・スー・チー氏は計33年の刑期の有罪判決を受けて拘束され、与党だった国民民主連盟(NLD)は昨年解散させられた。国軍は1月31日、非常事態宣言をさらに6ヵ月延長し、年内に国勢調査を実施した後に総選挙を行い民政に復帰させるとしているが、民主派への弾圧を続けている現状では、公正な選挙など到底望めそうにない。

 民主政治の復活を求める市民への弾圧、人権侵害は今も続き深刻化している。人権団体によると、この3年間で4,400人以上の市民が国軍により殺害され、2万人近くが拘束されているという。国連によると国土の3分の2以上が紛争状態とされ、戦闘の激化で劣悪な生活を強いられている避難民は、人口の5%に近い約260万人にのぼる。また、ミャンマーの消費者物価は1年間で3割上昇。1人当たり国内総生産・GDPが約16万円という同国経済の混乱は極限に達している。

 民主化の流れを力ずくで覆し、国民を武力で抑圧し続けているのは国軍だ。国の平和と安定を破壊し、民主主義を踏みにじった責任が国軍にあるのは言うまでもない。この惨状を見れば、もはや軍事政権に正当性や国民からの支持はなく、統治の資格も能力もないのは明らかだ。そのことを自覚し、直ちに弾圧をやめ、民主主義の回復を前提とした対話を始めなければならない。

 今、国際社会の関心が、ロシアによるウクライナ侵略やガザ地区での紛争に集中しがちだが、このまま3年以上続くミャンマーの危機が忘却されると、さらなる事態の悪化を招く。国際社会が粘り強く、軍事政権への圧力と対話による関与を強め、民主政への回復と戦闘により家を追われた避難民らへの人道支援を強化すべきだ。

 ミャンマーは第二次世界大戦の後半約3年間、日本軍が軍政を敷いた国である。また、日本の文学作品「ビルマの竪琴」やビルマ戦線でイギリス軍捕虜となり、その体験をもとに書かれた「アーロン収容所」など、昔からミャンマーとの関係は深い。日本は民主主義と平和の回復に大きな役割を果たすべき立場にあることを、改めて肝に銘じる必要がある。

古賀さん 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。

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