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メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第827号 2024年3月1日発行)byAVCC

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阿部秀司氏が遺した日本映画を偲ぶ

久保田了司
一般財団法人AVCC 理事長
霞が関ナレッジスクエア(KK2)代表

 今月は映画プロデューサー阿部秀司氏が遺した日本映画をご紹介します。中学生時代のクラスメイトだった1965年、映画『サウンド・オブ・ミュージック※YouTubeへのリンク』が日本で公開され、朝一の上映から最後の上映まで、ポップコーンを食べながら一日中映画館に居たことを懐かしく思い出します。私は一観客として大いに感激しましたが、阿部秀司氏は既に作り手の立場でこの映画を観ていて私に、「館内が暗くなり、トップシーン3分でいかに観客を映画の世界に引き込むかが勝負!」と、アルプスの空撮から草原でジュリー・アンドリュースが歌うシーンを熱く絶賛したのでした。


2018年6月13日「クリエイティブとビジネスの最大公約数を求めて!」講師:阿部秀司氏

 彼は30代半ばでプロダクション「ROBOT」を立ち上げ、1995年公開の映画『Love Letter』でプロデューサーデビューしました。「息を止めて雪原に横たわる、主演中山美穂の横顔に雪が舞い、ぷっと息を吐き起き上がり寂し気に静かな雪の斜面を下っていく、山岳事故で亡くなった婚約者の三回忌に参列したあと、婚約者が中学生時代に住んでいたという小樽の住所へ『お元気ですか』とあてのない手紙を出す」正に観客を映画の世界に引き込むトップシーンでした。

 その後「7月7日、晴れ」「ALWAYS 三丁目の夕日」「RAILWAYSシリーズ」「永遠の0」「海賊とよばれた男」「DESTINY 鎌倉ものがたり」「アルキメデスの大戦」等を続々と世に出し日本映画界を代表するプロデューサーとなられました。2018年6月13日にKK2で開催した「クリエイティブとビジネスの最大公約数を求めて!」では、優秀なプランナーは次々と出てくるが、映画の製作現場でモノづくりに励むスタッフ(ALWAYSの場合約100名)のほとんどはフリーランスで労働条件も厳しく、高齢化が進み人手不足になっていくことに大いに警鐘を鳴らされました。当時69歳だった阿部秀司氏は、今後10年間で興行収入を高め製作現場に還元する仕組みを作りたいと熱く語ったのですが、昨年12月に鬼籍に入られました。

 最後に製作総指揮として手掛けられた、昨年11月3日公開の『ゴジラ-1.0』は、日本での大ヒットもさることながら、全米で公開された邦画実写映画の興行収入記録を大きく塗り替え、歴代1位となり、獲るぞと目指していた第96回アカデミー賞「視覚効果賞」にもノミネートされました。3月11日のアカデミー賞の結果を見守りつつ、阿部秀司氏の遺した数多くの日本映画を偲び、ここにご冥福をお祈りします。

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