メッセージ from KK²

KK²weekly【メッセージfromKK²】（第835号 2024年4月26日発行）byＡＶＣＣ

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ブギウギ

 趣味は何かと問われたら、私は迷わずに「JAZZ」と応える。1970年頃まではビートルズ、その後ジャズを聞きだし、現在も時間があればジャズのライブに足を運ぶ。モダンジャズから聞き始めたが、時代を遡ると1920年代から40年代半ばまでは、スイング・ジャズが主流だった。スイング・ジャズとも関連のあった「ブギウギ」は、ちょうど時を同じくして、米国・シカゴで大ブームを起こし、アメリカ全土に広がる。その後、現代のポピュラー音楽の土台となった。

 日本では第二次世界大戦後、服部良一作曲、笠置シヅ子が歌う「東京ブギウギ」が1947年に発表されると、終戦直後の暗く苦しい混乱期の人々を勇気づけ大ヒットした。この2人のコンビは、次々と「ブギ」を名に冠する曲を世に送り出し、終戦後の日本を復興させるエネルギーとなったといわれる。

 この国民的歌手ともいえる笠置シヅ子をモデルとしたNHKの朝ドラ「ブギウギ」は、2023年10月から先月（3月）まで放送された。主人公・福来スズ子を演じる趣里は、総勢2,471人が争ったオーディションで選ばれ熱演した。「歌と踊りの審査は、東京ブギウギを自ら振り付けを考えてやってもらった。華奢な体だったが極めてエネルギッシュで、軸のブレがまったくなかった」と制作統括者を唸らせたという。「ただ歌の経験がないのと大阪出身じゃないことだけが大丈夫かなと思ったが、その不安を吹き飛ばすぐらいに素晴らしかった」とも。趣里は2011年に「3年B組金八先生」でデビューし2018年には映画「生きてるだけで、愛。」に出演、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。父親は俳優の水谷豊、母親は元キャンディーズの伊藤蘭である。

 物語は大正の終わりの大阪から始まる。母親・花田ツヤは水川あさみ、父親・花田梅吉には柳葉敏郎が演じるスズ子の両親が営む銭湯での、両親と常連客の大阪弁での会話が、面白くも人情味のある場面だ。ボケとツッコミの大阪の笑いのセンスも絶妙だ。桃色争議といわれるストライキを起こした責任を取り、梅丸少女歌劇団（USK）を退団した蒼井優が扮する大和礼子の熱血指導で、USK総勢20数名による一糸乱れぬラインダンスも圧巻だった。このUSKのモデルはラインダンス演出を代名詞とする松竹楽劇部（現・OSK日本歌劇団）だ。東京に舞台を移してからスズ子を指導する作曲家の羽鳥善一を演じるのは、草なぎ剛*。モデルは和製ポップスの歴史を語る上では欠かせない服部良一だ。ブルースの女王・淡谷のり子がモデルの茨田りつ子を演じたのは、菊地凛子。ドラマの時代は戦中から戦後に向かう中で、涙と笑いが溢れたさまざまな場面が登場する。出演者の演技力で音楽と踊りとドラマがからみ合いながら、エネルギーを生み出している。

 人生のどん底を見ながらもあきらめずに、趣里がスズ子の底抜けの明るさを、表情豊かに伸び伸びと表現している。現代を生きる私たちもさまざまな課題を抱えている。この「ブギウギ」のように、逆境に負けず多くの困難を乗り越えていきたいものだ。

*「なぎ」は弓へんに剪

古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業（現パナソニック）労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。

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