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メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第839号 2024年5月24日発行)byAVCC

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・・・情熱と判断力を駆使しながら・・・

古賀 伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長

 先日、ある団体の「政治研修講座」で、与野党を問わず政治家を目指す若い人たちに(現役の地方自治体議員もいたが・・・)、話をして欲しいと依頼され訪問した。これから政治家を目指す人たちには、大きな困難が待ち受けていると思う。なんといっても、成熟社会、超少子高齢・人口減少の中で、国や地方自治体の運営の舵取りをしていかなければならないからだ。心よりエールを送りたい。

 当日は、「これからの社会と“政治”を考える」を講題として、私の経験も交えながら話をさせてもらった。最後にドイツの経済学者・社会学者・政治学者であるマックス・ウェーバー(Max Weber、1864-1920)の名著『職業としての政治』の中から、「政治とは、情熱と判断力の2つを駆使しながら、堅い板に力を込めてゆっくりと穴をくり貫いていく作業である。そして、どのような事態に直面しても、“それにもかかわらず”“それでもなお私はやる”と断言できる人、そのような人だけが、政治への天職を備えている」を引用して締めくくった。

 『職業としての政治』(1919年)はマックス・ウェーバーが、大学生に向けて行った講演録が基になっている。講演当時、ドイツ帝国が第一次世界大戦で敗北し、革命によって帝政が廃止されるという騒然とした雰囲気の中であった。本書でウェーバーは政治、政党、官僚などのテーマについて論じている。職業としての政治は、政治家に対して「権力感情」を与える。それは他者を指導しているという意識や歴史的事件の一部を担っているという感情によって、非日常的な気分を味わうという能力と説く。それでは、如何にして職業政治家は権力にふさわしい人間に、また権力が自分に課する責任に耐えられる人間になれるのか。それに対して、ウェーバーは政治家には情熱、責任感、判断力の資質が特に重要だとする。そして、前述した言葉を述べ、この論を終える。

 今、日本では「政治とカネ」の問題をはじめ、政治や政治家への国民の不信が大きくなり、民主主義の危機が叫ばれている。一方、民主主義とは「自分たちのことは自分たちで決める」「みんなのことはみんなで決める」ことだ。家庭、職場、地域、サークルなど、すべて民主主義の場だ。この身近な民主主義を立て直す私たちの行動こそが、地方自治体や国の民主主義を再構築することにつながる。また、よく考えてみれば、ウェーバーの「・・・情熱と判断力を駆使しながら、堅い板にゆっくりと穴をくり貫いていく作業である。・・・」は、政治のみならず私たちが働き暮らすさまざまな営みの場面においても通じることだ。

 嬉しいことに、この主催団体の役員の一人が後日、私が13年前の2011年2月に東海地方で行った講演を聞いていたとのことで、その時の彼のブログをメールで送ってくれた。当時、市会議員1期生の頃で、それから彼は市会議員を2期、市長を3期務めた後退任し、現在は後輩の育成に励んでいる。今後のご活躍をお祈りしたい。

古賀さん 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。

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