ESGをご存じですか?
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野田 弘子
公認会計士
プロビティコンサルティング株式会社 代表取締役
一般財団法人AVCC理事
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前回(第834号)のメールマガジンで、「今の会社は“どんなことをしても儲かればいい”では許されなくなっています。」と申し上げましたが、これがESGです。
1)ESGとは何でしょうか?
ESGは投資家が持続可能性の観点から投資先企業を評価し選択するための指標となる枠組みで、次の3つの要素が含まれます。
・環境(Environmental): 企業がいかに環境負荷を最小化するビジネスモデルを作っているか?
・社会(Social): 企業がいかに働く人たちの職場環境を最適な成果をあげられるような仕組みにし、維持継続しているか?
・ガバナンス(Governance): 株主と株主から経営を委任されている取締役がいかに信頼性のある関係を構築しているか?
つまり、”何となく、世の中的にイケてる会社”になるための指標ではなく、投資家が長期的に持続的に成長する企業を見極めるための基準です。言い換えると、ESGに対応していない会社は投資先として選ばれない、企業の血液ともいえるお金が入ってこなくなるという深刻な話なのです。
2)ESGが注目されるようになったのは?
元々、教会の資金などが、アルコールや戦争ビジネスにかかわる企業への投資を禁止していたりするのも、古くからのあるべき投資の理念に基づくものと理解できますが、ESGが注目されるようになったのは2006年のPRI(Principles for Responsible Investment)がきっかけと言われています。PRIは、国連が支援する国際的なネットワークです。地球環境を守るためには、政治の枠組みだけではなく、経済の枠組みも組み入れる必要があり、そのためには、企業の所有者である株主・投資家の行動を促す必要がある、という考えに基づいています。PRIの6原則では、株主・投資家に対してESGを投資プロセスに組み込むことがうたわれています。
3)ESGは私たちにも関係がある
PRIには世界有数の機関投資家が署名しており、その規模は2023年3月末では120兆ドルを超えています。世界最大規模の公的年金である日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も2015年にサインしています。GPIFは厚生年金、国民年金合わせて200兆円以上を運用している法人です。
つまり、投資家というのは“どこかのお金持ちで”はなく、世界の多くの国で制度として存在している公的年金や企業年金やそこから運用を任されている投資会社等でもあるのです。
ESGの枠組みの採用により、企業と投資家がともに持続可能な社会の実現に向けて歩むことになったのだとも言えます。
次回はさらにESGと銀行の関係、ESGとSDGsの関係についてお話ししたいと思います。(10月予定)
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