|
メッセージ from KK2
KK2weekly【メッセージfromKK2】(第848号 2024年7月26日発行)byAVCC
|
無料で学べるKK2Webサイトの動画掲載本数 2,013 本
|
「選挙イヤー」の中での米国大統領選挙
|
古賀 伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長
一般財団法人AVCC理事
|
今年は「選挙イヤー」だ。既に7カ月が経過しようとしているが、約50カ国以上で大統領選挙や国政選挙が予定され、歴史的にも前例にない規模の「選挙イヤー」となる。米国やインド、ロシアなど世界人口の約半数が投票権を持ち、その結果は国際情勢にも大きな影響を与える。日本も衆議院総選挙の可能性は十分あり得る。
欧州と中東での2つの戦争ばかりでなく、ミャンマーやスーダンでも昨年は戦火が激しくなり、解決を見ないままだ。東アジアでも大国間競争と地政学的な緊張が高まっている。これらは国際社会の分断と対立を深め、これまで当たり前と思われてきた民主主義や自由、法の支配、自由貿易体制など、2度の大戦や冷戦を経て世界が築き上げてきた国際秩序や規範が、大きく揺らいでいる。選挙による国内政治のダイナミクスの変化は世界政治に影響を与え、地政学・地経学上のリスクを生じさせる可能性がある。力と力が対峙する秩序に戻るのか、平和と安全、人権と共存などの価値観のもとでの国際協調に踏みとどまるのか、歴史の転換点になる年ともいえる。
なかでも国際社会への影響が極めて大きいのが11月の米国大統領選挙だ。11月5日の本選に向け、年明けから民主、共和両党の予備選挙、党員集会が各州で順次行われ、後は党大会を迎えるだけであった。しかし、7月13日、トランプ前大統領がペンシルベニア州で演説中に銃撃されるという事件が起きた。トランプ氏は右耳を負傷したが命に別状はなかった。容疑者はその場で撃たれて死亡、その他に1名犠牲者が出てしまった。民主主義を妨害する暴力に対して、強い怒りを覚える。民主主義は個人の尊厳に立脚しており、暴力で遂行するものではない。そして、7月15日、トランプ氏がウィスコンシン州で行われた共和党全国大会で、正式に共和党の大統領候補に指名された。トランプ氏は党大会の直前に起きた銃撃事件にも動じない姿を見せ、「暴力に屈しない男」と一部の支持者の熱は高まった。党大会も暗殺未遂の危機をくぐり抜けた強い指導者というイメージを、強く印象づける演出で始まったという。一方、民主党の党大会は8月だ。高齢への不安が露呈し、民主党内でも大統領選から撤退すべきとの声が上がっていたバイデン大統領。銃撃事件を契機に求心力を高めたトランプ氏に、さらに守勢に立たされたとの見方も広がりつつある中、大統領選から撤退した。
この情勢変化から、マスコミには「もしトラ」が「ほぼトラ」になったという論説も散見される。確かに、共和党大会は大きな盛り上がりを見せただろうが、大統領選挙までにはまだ約4カ月あり、何が起こるかは誰にも分からない。一つの転機で情勢が大きく変わりうる可能性もあり、帰趨を占うには今後の展開をしばらく注視する必要がある。大統領選挙がネガティブキャンペーンで、ますます泥沼化するのでなく、銃撃事件やバイデン氏の撤退が、国民の冷静な思考と判断を生むことを心より期待したい。
|
古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。一般財団法人AVCC理事。
|
☆公式YouTubeでAI読み上げ動画も掲載中!
|
|
|

■発行元:一般財団法人AVCC 霞が関ナレッジスクエア事務局
〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート 西館ショップ&レストラン 3F
電話:03-3288-1921 FAX:03-5157-9225
|
霞が関ナレッジスクエア(KK2)は学校教育や企業研修では教えていない「しごと力」をいつでも、どこでも、誰でも学べる場を提供することを目的に、一般財団法人AVCCの公益目的事業として運営しております。
|