エキスパートの行動を観察し、真似る ~しごと力とコンピテンシー
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伊庭野基明
一般財団法人AVCC理事
KK2グローバルキャリアカウンセラー
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今夏の猛暑はようやく峠を越したようですが、9月になっても30度を超える日が続いています。季節区分も今までの「春夏秋冬」に「猛暑」を加えて五季と考え、仕事や生活、そしてなにより台風などへの防災、減災行動を現実、日常のものとする必要があります。尚、先月の秋田さんのメッセージでもハザードマップの事前確認や各種防災行動の必要性が説かれていましたので、改めて確認、実装にお役立ていただければ幸いです。
さて、先月号のメールマガジンでは、1900年初頭にアメリカのフランク・パーソンズが始めたキャリアカウンセリングの歴史と、その後の同国のマクレランドらが進化させたコンピテンシー研究、更にそれらと関連したKK2での取り組みについてご紹介しました。KK2での「コンピテンシー」関連コンテンツについては、すでにご参照いただいたかもしれませんが、今号でももう少しご紹介させていただきます。
まず、マクレランドはその著書(脚注1)で、「コンピテンシーはジョブと人とのマッチングがその中心的役割だ」と述べています。これは、職場において高い業績を上げる人がどのようなコンピテンシー(行動特性)を持つのかを観察し、それらを定量化することができれば、それを真似ることで、人と組織の生産性向上に役立つという考え方です。逆に言えば、あるジョブ(しごと)に必要なコンピテンシーを定義できれば、それに適合するコンピテンシーを持つ(あるいは学んだ)人とのベストマッチングが実現できる、ということです。

図:著者作成
ちなみに、マクレランドは、社会的学習理論に照らして「学びたい人のコンピテンシーを習得するには、その人のコンピテンシーをよく観察し、よく真似る」ことが重要だと述べています。昔からの、「親方のやり方を見て学ぶ」という、徒弟関係での暗黙知の継承を形式知化して一般化すると言ってもよさそうです。
KK2では、社会に貢献し活躍する人を「エキスパート」と呼び、その方々が共通して備える実践力としてのコンピテンシーを「しごと力」と名付けました。この「しごと力」を、Feel(人間関係力)、Think(問題解決力)、Act(行動力)の3つのコンピテンシーに分類しています。「KK2エキスパート・スタジオ」(2007年~2020年開催)では、55名の様々な分野のエキスパートにご登壇いただき、エキスパートのしごと力とコンピテンシーについて存分に語っていただきました。皆さんもエキスパートの方々のコンピテンシーを「よく観察し、よく真似る」事を試してみてはいかがでしょうか。尚、「KK2エキスパート・スタジオ」は、現在は「デジタルTERA小屋」として再構成されていますが、ゲストのしごと力やコンピテンシーについては、同様に学ぶことができますので、是非合わせてご活用ください。
注1:「コンピテンシー・マネジメントの展開」L.M.スペンサー/S.M.スペンサー著(生産性出版)
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