メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第857号 2024年9月27日発行)byAVCC

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“異常”気象でなく“新しい日常”

古賀 伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長
一般財団法人AVCC理事

 今月1日は「防災の日」だった。この日は1923年に発生した関東大震災にちなんだものであり、1960年に制定された。その日を挟んで日本列島を台風10号が縦断した。この台風10号はノロノロと迷走し、広い範囲に記録的な雨を降らせ、大きな被害をもたらした。九州に上陸した際も、強風雨域から離れた東海や関東、さらには東北でも局地的な集中豪雨や落雷、突風といった激しい気象現象が起きた。台風10号は日本近海の水温が記録的に高かったことに加え、偏西風も通常より北側にあったため、その風に流されず速度が遅いままだった。

 一方、今年元日には能登半島地震が起き、8月8日には日向灘地震を受けて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が出されるなど、日本は地震大国だ。加えて、能登半島は先週末から記録的な豪雨に見舞われた。地震と気象災害が重なる「複合災害」では、被害が桁違いに大きくなる可能性が高く、政府、自治体、私たち住民が連携してリスクを最小化する取り組みを進めなければならない。そのためには、災害を想定した訓練の普及と定着が求められる。訓練を重ねることで住民同士が協力し支え合う「共助」の輪を広げ、人と人のつながりの大切さを認識し合うことにもなる。そのことが災害弱者を守るコミュニティをつくることにつながっていく。

 激しい気象現象は地球温暖化の影響が大きい。台風は一般的に温かい水蒸気をエネルギー源にして発達する。地球温暖化に伴い、今後はさらに勢力を増す可能性が高い。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次評価報告書によると、地球温暖化により産業革命前よりも2度平均気温が上がれば、台風10号のような非常に強い台風やさらに強い「猛烈な台風」の割合が13%高まるとされる。台風による平均降水量は12%増すという。地上の温度が1度高くなると水蒸気の量は7%程度増えるため、台風の勢力や降水量が増えると考えられている。 気象庁気象研究所の研究では、温暖化で大気の流れが変化すると、上空の風が弱くなり、台風の移動速度は約10%遅くなるという。近年の台風は上陸前後に動きが鈍いことが多く、被害拡大の要因となっている。また、日本近海の海面水温が速いペースで上昇しているとし、長期的には豪雨の頻度が増えるとの見解を示した。これまで雨が比較的少なかった地域でも警戒心を高める必要がある。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのネイザン・スパーク博士は「人間が気候を温暖化させる限り台風は激化し続ける」と述べている。

 従来の常識とは違う現象であり、過去の経験値が通用しなくなっている。「異常」ということではなく、「新しい日常」であり、その中で私たちは暮らしていかなければならない。人間活動によって進む地球温暖化が、こうした荒れる気象の背景にあることは否定できない。地球市民の一員としての私たちにとって避けて通れない重大な課題である。個人と社会全体での行動の積み重ねが、大きな変化を生むことを信じて、私たちも身近な取り組みを進めていかなければならない。

古賀さん 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。一般財団法人AVCC理事。

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