メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第859号 2024年10月11日発行)byAVCC

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デジタル時代の「人間拡張」をどう考えるか?

伊庭野基明
一般財団法人AVCC理事
KK2グローバルキャリアカウンセラー

 少し早いですが、来年は2025年。昭和世代である私たちが「鉄腕アトム」で夢見た21世紀、その最初の四半世紀の区切りを迎えます。この25年は、2001年の同時多発テロに始まり、インターネットやデジタル技術の急速な進化、グローバル化による地政学的変化、人口増加、異常気象、そしてCOVID-19パンデミックといった、地球規模の大きな変化の時代でした。21世紀初頭に、私は「グローバル社会と日本人に求められる力」というプログラムをKK2で2008年に初めて作成しました(現在は2017年リメイク版を公開中です)。これ以後の時代、デジタル化ではSNSやスマートフォンで巨大メディアを生み出し、コミュニケーション手段に革命的な利便性をもたらしました。しかし、山本龍彦教授が「情報的健康」で指摘されているように、アテンションエコノミーが生まれ、フィルターバブルや理性的判断の偏りといった深刻な課題も生じています。

 人類は、道具を発明し、技術を進化させることで農業革命や産業革命を成し遂げ、生活や仕事、移動のスタイルを大きく変えてきました。1970年代、カナダのメディア学者マーシャル・マクルーハンはこれを「人間拡張の原理」として提唱しました。衣類は肌、自動車は足、そしてコンピューターは脳の拡張であるという具合です。彼はまた、「拡張が進むと世界は一つの村(グローバル・ビレッジ)になる」という説も出しました。

 1968年に公開された映画「2001年宇宙の旅」に登場する、人間と対話する“意思を持った”コンピューターHALの類は、生成AIの登場の更なる進化で、2045年頃までに実現するというシンギュラリティー説に符合しますし、今後のAI、VRの普及次第では、私たちは本格的に思考能力拡張時代を迎えつつあるという事でしょうか。

 さて、自動車は、フォード社が1903年に設立されてから100年かけて進化し、普及しました。その間、道路や給油所、車庫といったインフラの整備とともに、規則や免許制度も整備されました。この人間の移動能力拡張の例は、物理的に見て感じる速度と進化が一致していたと思えます。一方で、目に見えない形で急速に進化するITやデジタル社会における人間の認知能力拡張には、「情報的健康」のような社会的な制度づくりがより必要です。私たちは、これらの拡張された道具や機能を使いこなし、人間本来の理性や倫理をもってデジタル社会を生き抜くことが求められています。これからも皆様と共に考え、共に学び、共に担う社会を目指して行ければ幸いです。

伊庭野さん 伊庭野基明
1974年慶應義塾大学卒。日本IBM、リクルート、慶應義塾大学、外資金融機関等を経て、現在KK2グローバルキャリアカウンセラー(米国 GCDFキャリアカウンセリング資格)。
一般財団法人AVCC理事

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