住民総出で紡ぐ地域とレジリエンス
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久保田了司
一般財団法人AVCC 理事長
霞が関ナレッジスクエア(KK2)代表
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岩手県大船渡市末崎町は、東日本大震災において、津波による死者・行方不明者64人、住家の被害875棟、登録漁船数732隻のうち595隻が流失しました。現在の人口は3,653人(震災前は4,933人)、少子高齢化による人口減少が急速に進む小さなまちです。私は10月25日から27日、「デジタル公民館まっさき」でご縁をいただいた末崎地区公民館(ふるさとセンター)と居場所ハウスを訪ね、旧知の皆さまと交流する機会をいただきました。
コロナ禍もあり5年ぶりに開催された「末崎町民文化祭(10月26日、27日)」では、10月19日に挙行された末崎町中森に鎮座する熊野神社の式年大祭の記録映像が上映されました。参加された多くの住民の方々に観ていただき、人口が減少する中、伝統行事を止めずに工夫して開催に漕ぎつけた苦労話を聞かせていただきました。
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この式年大祭では、7つの地域による組(西舘組、碁石組、山根組、三十苅組、門中組、小河原組、梅神組)で永年継承されてきた伝統の虎舞、七福神舞、手踊り等が住民総出で奉納されました。五穀豊穣や大漁・安全などを祈る熱い活気が溢れ、伝統文化の継承で培われた地域コミュニティのレジリエンスを体感しました。
人と目を合わせずスマホに目を落とす都会とは違い、人々が集い、顔と顔を合わせることで生まれる「人と人との繋がり」は、地域社会の絆を深め、災害などに対する「レジリエンス」を高めています。地域社会の持続可能性を支えるのは、最先端のデジタル・トランスフォーメーションではなく、人々の心と心のつながりであることを再確認できました。
少子高齢化、人口減少、そして政治への関心の低下など、現代社会は多くの課題を抱えています。しかし、末崎町の人々が伝統を守り、地域社会を築き上げているように、私たち一人ひとりが自分のできることから始め、より良い社会を築いていくことはできるはずです。私は、地域社会の大切さを再認識し、その活性化のために貢献したいという思いがより強くなりました。
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