CO2削減に真剣に取り組む企業はお金も借りやすい!?
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野田 弘子
公認会計士 / プロビティコンサルティング株式会社 代表
一般財団法人AVCC理事
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前回(第860号)のメ-ルマガジンでは「ESG」(企業は何をしなくてはならないのか)についてご紹介をしました。今回はESGと銀行の関係についてお伝えします。
ESGのおさらい:
ESGは投資家が持続的に成長する企業を選択するためのキーワードです。
図:KK2事務局作成
つまりこんな会社では困るということです。
E:CO2削減を中心とする環境課題を放置する会社
S:働く人の安心安全、健康を無視する会社
G:経営者の独断専行を許す会社
第847号のメ-ルマガジンで責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)、国連が支援する、年金等の投資家に環境、社会、ガバナンス(ESG)要素を考慮に入れた投資活動を促進するためのガイドラインを説明しました。
実は責任銀行原則(PRB:Principles for Responsible Banking) もあるのです。責任銀行原則は、銀行にも持続可能な発展に貢献してもらうために、2019年9月に国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)によって発表されました。グローバルに活動する世界中の主要な銀行が賛同しています。例えば日本でもメガバンク、地方銀行でも滋賀銀行等が賛同しています。
これに賛同する銀行は例えば・・・
・CO2を多く排出している企業やプロジェクトへの融資残高を減らす
・逆に環境に配慮した事業や再生可能エネルギー事業に積極的に融資する
ということになりますね。
また今後、上場企業はCO2の排出量を開示していく必要がありますが、皆さん、スコープ1,2,3という言葉をお聞きになったことはありませんか?
簡単に言うと
スコープ1は自社で排出したCO2
スコープ2は自社が使用した電気等が作られたときに排出したCO2
スコープ3は自社の事業に関連して他社が排出したCO2
ということは、原料の調達から、物流、販売、さらには販売した物品が廃棄されるまでの排出等、従業員の通勤等、いわゆるバリューチェーンで発生する自社の事業活動に関連するすべての排出が含まれることになります。スコープ3には購入、輸送、通勤等合わせて15のカテゴリーがあり、その15番目は投資ですが、銀行は投融資先のCO2の排出量まで含めなくてはならないということなのです。そうなると、CO2を多く排出している企業との関係を断ち切ってしまうのが最も簡単な排出量削減の手段ですが、それは経済のインフラとしての金融機関の態度としてはどうよ?ということになりますよね。だからこそ、投融資先の企業に積極的なCO2削減に取組むようなアドバイザリー事業や、設備投資への優遇が行われているわけです。
このように、経済活動の血液ともいえるお金を扱う銀行も持続可能(サステナブル)な世界の実現に大きな責任を背負っています。
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3月6日開催予定のKK2デジタルTERA小屋「社会の変化を会計で読み解く ~どう働き、どう生きるか~」に、登壇いたします。皆様のご参加をお待ちしております。
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