メッセージ from KK2

KK2weekly【メッセージfromKK2】(第879号 2025年2月28日発行)byAVCC

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問われている人権対応への姿勢

古賀 伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長
一般財団法人AVCC理事

 すべては3月末のフジテレビが設置した第三者委員会の調査結果を待たねばならないが、人気タレントの中居正広さんは引退に追い込まれ、スポンサー企業のCM差し替えが相次ぎ、約80社が広告を見合わせた。番組自体が放送中止になるケースもあるなど、異常事態に陥っている。中居正広さんと女性の間のトラブルを巡り、フジテレビの組織的関与が疑われるスキャンダルが、企業としての存在意義そのものを問うている。この問題への対応について、多くの批判が寄せられた。

 特に1月17日に行われた記者会見は、参加メディアを限定しテレビ取材を禁止するなど閉鎖的な形で行われたため、説明責任を果たしていないとの指摘が相次いだ。1月27日に行った2度目の記者会見では、時間制限を設けず、参加メディアを限定しない形で実施された。しかし、質疑応答の際には記者から怒号が飛び交い、会見時間は約10時間半にも及んだ。この長時間の会見は、時間無制限にしたことで場の収拾がつかなくなり、進行に大きな影響を及ぼした。最初の会見で閉鎖的な対応が批判を招いたため、オープンな形式を採用したが、結果として混乱を招く事態となった。記者会見の進行を円滑にするために、適切な時間配分や質問のルール設定を検討する必要がある。また、司会者の進行能力や記者の質問態度についても改善が求められる。今後は、透明性を確保しつつ、秩序ある会見運営を目指すことが重要だ。

 問題の本質は、フジテレビのガバナンスやコンプライアンス体制の不備が浮き彫りになり、社内外からの信頼が揺らいでいることだ。問題発生時の危機管理体制が十分でなく、初期対応の遅れや情報公開の不足が問題を深刻化させた。株式会社フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビは、取締役会の改革を含む抜本的なガバナンスの見直しを急ぐ必要がある。信頼回復のためには、透明性のある調査と適切な情報発信を行い、視聴者やスポンサーに対して誠実な対応を取ることだ。また、番組制作の透明性を高めることも大切だ。

 近年芸能界とメディアをめぐっては、旧ジャニーズの性加害問題もあり、ハラスメントに対して社会の厳しい視線が注がれている。人権軽視の姿勢を改めない限り、失墜した信頼の回復は望めない。長期的にメディアのブランドイメージを回復するには、視聴者の変化に対応した新たな関係の構築も重要だ。視聴者が求める誠実で質の高い番組作りとともに、SNSを活用した積極的な情報発信、双方向のコミュニケーション、ネットメディアとの協力関係の構築などが挙げられる。疑念の目は、業界全体にも向けられている。タレントマネジメントやリスク管理のあり方を見直す契機ともすべきだ。他の企業にとっても人ごとではない。自らを省みる機会として、各社が危機意識を持ち、徹底した調査や企業文化の見直しに取り組むことが大切だ。 人権対応への姿勢が問われているのは、フジテレビだけではない。

古賀さん 古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。一般財団法人AVCC理事。

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