日本が今のアメリカから学ぶべきことは多い
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伊庭野基明
一般財団法人AVCC理事
KK2グローバルキャリアカウンセラー
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先月号では「アメリカ社会、どうなる『DEIの今後』」について紹介しましたが、その後もトランプ政権の過激な言動が続いています。先週の施政方針演説では、これまで国家戦略と方針を表明し、概ね党派を超えてよりよい国家を目指す場であったはずの演説が、前任のバイデン氏や民主党への批判に終始し、異なる価値観を持つ相手との分断を深めることに重点を置いた内容となりました。反DEI(多様性・公平性・包括性)をはじめとするいくつかの政策は、第一期トランプ政権下で実施されたものがバイデン政権下で撤回され、再びトランプ新政権により復活するという流れをたどっています。読売新聞アメリカの今井総局長は、「アメリカをこれまで強くしてきた多様性が、今や深刻な分断を生み出している」と指摘し、さらに「近年、日本に定住する外国人も増えてきており、日本がアメリカほど多様な社会になることはないにせよ、今のアメリカから学ぶべきことは多い」と評しています。(脚注)

(筆者作図)
実際に、東京大学への外国人受験者の増加や、日本企業における外国人採用の拡大が報道されるなど、日本社会においても新たなグローバル化が進行しています。今世紀に入り、海外大学を卒業した日本人を積極的に採用し、急成長を遂げた企業もある一方で、多様な人材の活用が進んでこなかった企業は、日本の人口減少を前に今後どのように対応していくのでしょうか。
近年、日本企業では従来の「メンバーシップ型雇用」に加え、職務内容を定義した「ジョブ型雇用」の導入が進んでいます。外国人採用においてはジョブ型が主流になるとの見方もありますが、スキルの可視化を前提とするこの雇用形態が、多様な価値観との共存において有効な手段となる可能性もあります。いずれにせよ、これからの日本社会で求められるのは、異なる価値観を持つ人々とどのように関係を築くかという点です。アメリカで現在起こっている価値観の分断に陥らず、上図に書いたように、多様な世界観同士が共通の理解を深め、相互の自由を尊重しながら共存できる社会をいかに構築できるかが問われています。
最後になりますが、「KK2キャリア相談室」で、まずはご自身のキャリア観を確認してみてはいかがでしょうか。
参照:読売新聞アメリカ総局著.『分断国家アメリカ-多様性の果てに』.中公新書ラクレ,2024,220P
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