やがて来るか「日本社会の多様化」
|
伊庭野基明
一般財団法人AVCC理事
KK2グローバルキャリアカウンセラー
|
先月号では「今、アメリカから学ぶ事は多い」と紹介しましたが、今回は、そのアメリカを支えてきた多様化社会での共生と日本のこれからについて考えてみたいと思います。日本では少子高齢化による労働力不足や国内市場の縮小が進んでいて、人手不足の現状が飲食店でのデジタルによる省力化や、工事や復旧事業の遅延など、身近に多く見てとれます。一方、アメリカは建国以来、多くの国からの多様な人材を活用しながら経済を発展させてきました(脚注書参照)。もちろん、外国人材の受け入れには多くの課題があり、現在も、移民をめぐる政策の変動などの議論が続いています。それでも、多様な背景を持つ人々が対話を重ねながら、共生社会を目指し、経済と国家を発展させてきた事は事実です。
ここで、今の日本での外国人の状況を見てみると、令和6年末の在留外国人数は376万8,977人(前年末比10.5%増)(出入国在留管理庁)となり、3年連続で過去最高を更新しています。アジア諸国から就労目的等で来日する動きが拡大し、国の想定の倍を上回るペースで増加との事ですが、ちなみにこの数字は静岡県の人口とほぼ同じです。円安での仕送り額が目減りする中でのこの伸びですので、円高になれば一層の増加が見込まれ、更に、先月号でも触れましたが、進学目的の在留者も増加傾向との報道もあり、「日本社会の多様化」は現実味を帯びてきています。

在留外国人数の推移(出典:出入国在留管理庁)
さて、このような多様化が進むなか、日本人はどう生きて行けばよいのでしょうか。例えば、外国人労働者を単なる労働力の補充としてではなく、社会の一員として受け入れるという考え方を増す必要があります。多様な文化を受け入れ、共通了解の幅を広げ、お互いの自由を尊重しながらの共生社会を築いていけるかが問われています。出入国在留管理庁の共生社会パンフレット「HarmoniUP!」には日本語学習、各種支援サービスなどが紹介されていますが、KK2でも「しごとのにほんご」という学習プログラムを提供しており、多くの方々にご利用いただいています。日本が直面する多くの課題の中で、外国人との共生がテーマの一つになりつつあります。アメリカの歴史と今に学びながら、日本人としての自分たちのマインドセットを見つめ直し、日本に適した共生の仕組みを考えることが、今、求められています。
参考:岩波新書『移民国家アメリカの歴史』貴堂 嘉之 (著)
|