日本のレジリエントな時間感覚
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伊庭野基明
一般財団法人AVCC理事
KK2グローバルキャリアカウンセラー
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変化が常態化した社会において、私たちは「効率の向上を目標とし、早く動けること」を成功の条件と考えてきました。しかし、AIやDX、国際秩序の再編、気候危機など、激変するテーマは次々に現れ、そのたびに変化への対応を迫られる日々が続きます。一方で、「どう生きるか」への答えが見えないまま、最近は不条理な事件が多くなったと感じるのも事実です。
だからこそ、このような時代にあえて日本という国の「変化への時間感覚」を見直してみてはいかがでしょうか。即応せず、じっくり変わる。常に半歩遅れて歩き出すように見えても、結果として最も安定したかたちで到達する――その姿勢には、長期的なレジリエンスのヒントが隠されているようにも思えます。
ジェレミー・リフキンは近著『レジリエンスの時代』で、「変化に耐えるのではなく、変化と共に揺らぎながら応答する力」が、混乱する今の社会に必要だと述べています。日本文化の底流には、まさにそのような、人間の身体感覚の速度に優しい、たおやかな適応力が埋め込まれているようにも見えます。
伊勢神宮の式年遷宮のように、日本人は「古式を守るために定期的に刷新する」という独自のリズム感覚を持っています。1300年以上も続くこの営みは、まさに「時間をかけて変わる力」の象徴といえるでしょう。
日本社会の変化は、しばしば「遅すぎる」と語られますが、それは「拙速でない」と言い換えることもできます。物理学の世界に「時定数」という言葉があります。「時定数」が長い社会は、変わるのに時間はかかるものの、一度変わればその状態を長く維持できる「時間軸」とも言えます。混迷の時代には、むしろこの「構造的な持ちこたえ」が未来を支える基盤になるのかもしれません。
KK2では、本日10月10日(金)19時からの第12回デジタルTERA小屋には、石原端子さんをお迎えし、「スポーツの力で こころを育てる」と題してお話しいただきます。申し込みはまだ受け付けていますので、ぜひご参加をご検討ください。
焦らず、止まらず、揺らぎながら整える。変化が速すぎる時代にこそ、そんな姿勢が、まだ見ぬ新しい世界の「トップ」へとつながる道になるのかもしれません。
注)「時定数」:ある系の状態変化の速さを表す定数であり、時定数が短いほど、変化が速いことを意味します。
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