「アフォーダビリティ」とは ―私たちの暮らしをどう維持するか―
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伊庭野基明
一般財団法人AVCC理事
KK2グローバルキャリアカウンセラー
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今年は、災害や物価の上昇、人口減と地域の疲弊、そして急速なデジタル化など、暮らしの足元を揺さぶる出来事が続きました。21世紀も四半世紀が過ぎようとする中で、「日々の暮らしを無理なく続けられるか」という問いが、あらためて私たちの前に置かれているように感じます。アメリカでは最近、「アフォーダビリティ(affordability:暮らしを維持できる力)」という言葉がよく使われるようになりました。住宅、医療、教育などが生活者にとって手が届く水準にあるかを問い直す動きで、制度や仕組みを“暮らす側”の視点から見直す考え方です。
日本には同じ言葉こそありませんが、私たちの暮らしの基盤も静かに揺れています。熊の出没、下水道や道路の老朽化、人口減と過疎化による地域の弱体化。形は違っても、いずれも「安心して暮らせる基盤が保てるか」という問いにつながっています。こうした変化に向き合うには、気合いや根性だけでは不十分で、丁寧に“足元を見る力”が求められます。だからこそ、今の時代に必要なのは、小さくても前へ向かう力ではないでしょうか。暮らしの足元を整え、人との関係を大切にし、身近な出来事にしっかりと目を向けること。社会全体を動かすことはできなくても、自分の周りの「守るべきもの」を見つめること。それは、変化が大きい時代にあって、私たちの暮らしを支える確かな力になります。これは、5年前の613号で触れた「一燈照隅、万燈照国」とも通じる考え方です。
先月の元渋川消防長・青山省三氏の講演では、「人に愛され、ほめられ、必要とされ、役に立つこと」が人の力を支えると話されていました。こうした人と人との関係が、揺らぎの大きい時代こそ、暮らしの基盤になるのだとあらためて感じます。先月発表された Open Doors 2025 でも、世界の学生移動に新しい変化が見えてきました。これについては、来月以降の号で触れていきたいと思います。
先が見えにくい時代ですが、まずは現状を受け止め、共に考え、共に学び、共に担う社会へと一歩を踏み出す。技術や仕組みの変化に流されず、自分の暮らしを大切にしながら未来に備えていく。社会が大きく変わる今だからこそ、私たちは自分の暮らしの基盤を静かに見つめ直す必要があります。それが、私たちの「前へ向かう力」になるのだと思います。今年も「メッセージ from KK2」をお読みいただき、ありがとうございました。どうぞ穏やかな年末をお迎えください。
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