「内なるグローバル化」の今とこれから
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伊庭野基明
一般財団法人AVCC理事
KK2グローバルキャリアカウンセラー
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日本の総人口は減少局面に入り、合計特殊出生率は長く1.3を下回り、出生数も年間70万人を切る水準まで落ち込みました。社会の担い手が自然に増える時代は、すでに終わったと言ってよいでしょう。2月8日に衆議院選挙の開票を終え、表面では政策実行が動き出すかに注目が集まっていますが、足元では静かに、しかし確実に社会の前提が変わりつつあります。
その変化の一つが、選挙の争点にもなった在留外国人の急増です。2024年末時点で約376万人だった在留外国人数は、2025年6月時点には約395万人となり、わずか半年で20万人近く増えた計算になります。これは緩やかな変化ではなく、明らかな転換点と受け止めるべき動きです。
先月のメッセージで取り上げた米国の留学生統計「Open Doors 2025」では、インドを筆頭に、ネパールやバングラデシュなど、いわゆるグローバルサウス諸国の存在感が一段と高まっていることが示されました。世界の学生移動が一極集中から分散へと移るなかで、日本の社会構造もまた、その影響を受けながら形を変えています。実際、在留外国人の内訳を見れば、ベトナム、ネパール、インドネシアといった国々の増加が目立ち、かつてとは異なる構成になっています。

画像:法務省統計(2025年6月公表データを元に著者が作成)
ネパールについて言えば、近年は来日した若者が日本で中古車を購入し、それを母国に送るビジネスが広がっているとも聞きます。個々の動きは小さく見えても、生活と経済をまたぐこうした行動が、国境を越えて日常的に起きている点は、これまでの「外国人労働者像」とは明らかに異なります。
かつて、私は日本人が外の世界とどう向き合うべきかを考え、「グローバル」という言葉に期待を込めていました。しかし時間を経て見えてきたのは、日本人が外へ変わろうとする速度よりも、日本社会の内側が物理的に変わっていく速度のほうが、はるかに速かったという現実です。
いま起きているのは、制度や理念として用意された国際化ではありません。人口減少が進む日本社会の空き地に、世界各地から若者が渡来し、働き、暮らし、地域の一部になっていくという、ごく現実的な変化です。私たちが「外」に理想像を求めていた時代は終わりつつあります。これから問われるのは、約395万人の隣人と、どのような関係を築いていくのか。生活圏のなかで共生をどう組み立てていくのか。皆が共に考え、共に学び、共に担う社会をどう描くのか。その問いに向き合うことこそが、今の日本に求められているのではないでしょうか。
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