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メッセージ from KK2
KK2weekly【メッセージfromKK2】(第931号 2026年2月27日発行)by AVCC
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解散は例外であるべき
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古賀 伸明
元連合会長
公益社団法人国際経済労働研究所会長
一般財団法人AVCC理事
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2月8日投開票の衆院選には、850億円を超える費用がかかったという。金額の大きさに驚く前に、まず問うべきことがある。前回の総選挙から、まだ1年数カ月しか経っていないという事実である。
日本の一般会計はおよそ110兆円規模であり、850億円はその0.08%に過ぎない。国家財政全体から見れば小さな数字だという人もいるだろう。だが、単独の支出として見れば決して軽い額ではない。例えば、将来を担う子どもたちに関する施策でも、仮に保育所整備を1か所5億円とすれば170か所分に相当する。児童手当(月1万円)で換算すれば約70万人の1年分にあたる。民主主義のコストだと言われればその通りだが、これほどの資源を短期間で繰り返し投入する合理性は、どこにあるのか疑問だ。
日本国憲法は、衆議院の解散を認めている。7条文上は、内閣の助言と承認に基づき天皇が解散することができるとされる。しかし、その規定は政権の都合による「いつでも解散」を無制限に認めたものではないはずだ。本来、解散とは、国政が重大な行き詰まりに直面し、国民に最終的判断を仰ぐ必要が生じたときの例外的手段であるべきだ。
歴史を振り返れば、解散権のあり方をめぐる議論は繰り返されてきた。解散権を広く認める「7条説」と、内閣不信任決議との結び付きを重視する「69条説」との学説対立も続いてきた。だが少なくとも共通しているのは、解散が民主主義を強める手段であるべきで、政権維持や党利党略のための道具であってはならないということだ。
前回の選挙からわずか1年数カ月で再び国民に判断を求めるということは、前回の民意を自ら軽んじることにほかならない。任期4年という制度設計は、政権に一定の安定期間を与え、その間に政策を実行し、成果と責任を明確にするためにある。短期間での解散が常態化すれば、政策は腰を据えて実行されず、常に「次の選挙」が最優先になる。結果として、政治は中長期的課題から目をそらし、人気取りの施策に傾きやすくなる。
さらに、選挙は行政現場にも大きな負担を強いる。全国の自治体職員は準備に追われ、学校や公共施設は投票所として使用される。選挙運動期間中は政治的対立が社会を覆い、経済活動にも少なからぬ影響が及ぶ。これらは金額に換算しにくいが、確実に存在する「見えないコスト」である。
もちろん、政権が信を問う必要が生じる局面はある。国会が機能不全に陥り、法案が全く通らない、あるいは重大な政策転換が避けられない場合などは、その典型だろう。しかし、そうした明確な理由が示されないまま、短期間での解散・総選挙が繰り返されるならば、それは制度の濫用と言わざるを得ない。
前回の選挙で与えられた4年の任期を、まずは真摯に全うする。政策の成果と失敗を積み重ねたうえで、堂々と国民の審判を受ける。それが本来の筋道である。
前回の選挙からわずか1年数カ月で再び国民に負担を求めることの是非を、私たちはもっと真剣に問い直さなければならない。民主主義の価値を守るためにも、解散は例外であるべきだ。
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古賀 伸明
1952年生まれ。松下電器産業(現パナソニック)労組中央執行委員長を経て、2002年電機連合中央執行委員長、05年連合事務局長。09年から15年まで第6代連合会長を務めた。その後22年まで連合総研理事長を務め、現在は国際経済労働研究所会長。一般財団法人AVCC理事。
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