新しい協働のかたち――三つの人材が交わる職場で
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伊庭野基明
一般財団法人AVCC理事
KK2グローバルキャリアカウンセラー
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4月1日、各地で入社式が行われ、新たな社会人としての一歩を踏み出す若者たちの姿が報じられていました。売り手市場が続く中で、企業側の採用競争は一段と激しさを増し、新入社員の企業選びの軸にも変化が見られるようです。かつては「やりがい」や「成長機会」が重視されていたとされますが、近年は福利厚生や待遇、働きやすさといった要素への関心が高まっているとの指摘も多く見られます。こうした動きは、単なる世代の違いとして片付けてよいものなのでしょうか。
この変化を「若者の安定志向」と捉える見方もありますが、コロナ禍以降の不確実な社会環境を踏まえれば、生活基盤を重視する選択はむしろ合理的とも言えます。働く意味が自己実現から生活基盤へと重心を移しつつあるとすれば、それは価値観の後退ではなく、環境に応じた再調整なのかもしれません。
一方で、日本の労働市場にはもう一つの変化が進んでいます。いわゆる「技人国」(技術・人文知識・国際業務)を中心とした外国人就労人材の増加により、異なる文化や前提を持つ人々が同じ職場で働くことが日常となりつつあります。さらに、近年拡大してきた特定技能制度についても、一部の分野で受け入れ枠が上限に達したとの報道が見られ、外国人材の受け入れが量的にも質的にも新たな段階に入りつつあることがうかがえます。
こうした状況を踏まえると、現在の職場は三つの異なる人材層が共存する構造へと移行しつつあると考えられます。従来の価値観を体現してきた既存人材、新たな志向を持つ若手人材、そして外部から加わる外国人材。それぞれが異なる前提を持ちながら、同じ組織の中で協働する時代に入っています。
 著者作成
そこでは、働く目的や評価、コミュニケーションの前提において、これまでの暗黙の共有が揺らぎ始めています。しかしこれは問題というよりも、同質性を前提とした組織から、異質性を前提とした組織へと移行する過程と捉えるべきでしょう。
今求められているのは、一つの価値観に統一することではなく、異なる前提を持つ人々の間で共通了解を形成し、相互尊重の協働を実現していく「しごと力」です。私はこれを「内なるグローバル化」と呼んできました。
働く意味が変わるとは、仕事の選び方が変わることではなく、人と人がどのような前提で共に働くのか、その基盤が変わることでもあります。新年度の始まりにあたり、私たちは新しい協働のかたちを模索する段階に入っているのではないでしょうか。
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