対話は共生の知恵
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秋田 義一
一般社団法人話力総合研究所 理事長
一般財団法人AVCC理事
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自然界の問題解決の手段は多くの場合、弱肉強食です。あるいは適者生存、優勝劣敗と言われます。一方、人は、対話によって問題を解決できる唯一の存在です。ことばを交わし、相手を理解し、共に生きる道を探ることができます。この「対話」という能力こそ、人間の存在意義そのものだと私は考えています。
ところが、現実の世界を見渡すと、対話よりも力による解決が幅を利かせています。NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」の主題歌(※)に、「日に日に世界は悪くなる」と、世界の不穏さを映すような一節があります。(※歌手:ハンバート ハンバート/作詞作曲:佐藤良成/2025年「笑ったり転んだり」より引用) ロシアによるウクライナ侵略、米国・イスラエルによるイラン攻撃。弱肉強食という"力による問題解決"が、再び勢いを増しているように思えてなりません。
しかし、力による解決が何も生み出さないことを、人類は歴史から学んできたはずです。ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン紛争…。いずれも本当の意味で「勝利」と呼べる結果には至らず、むしろ長期の混乱を招きました。特に今の時代、これからの時代、戦争に勝利などありえないのです。
ところで、スポーツの世界では、かつて暴力的な指導が「熱血」と称されていたように思います。しかし、今成功している指導者の多くは対話型の指導を実践しているのではないでしょうか。彼らは口をそろえて、「厳しいことばや物理的な苦痛や不快感で反発させて力を引き出す指導は、もう時代遅れだ」と言っています。
問題解決の最良の方法は、やはり対話です。忍耐強く向き合い、相手を理解し、共に解決策を探る。その意識と努力が、当事者すべてに求められるのです。そして何より、対話を実りあるものにするためには、私たち一人ひとりがコミュニケーション能力を高める必要があります。対話とは、まず「聴く」こと。「聴きあうこと」です。相手の立場や考えを理解し、共生の道を見いだすことです。
 事務局作図
対話は共生の知恵。世界がどれほど揺らいでも、「日に日に世界をよくしたい」という願いを手放さず、人間だけが持つ“対話の力”を信じ続けたい。人間の存在意義は、対話により問題解決を図れることにあるのです。
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