不動明王のご加護を!
|
久保田了司
一般財団法人AVCC 理事長
霞が関ナレッジスクエア(KK2)代表
|
2026年2月28日、米国・イスラエルによるイラン攻撃によって、中東は先の見えない、後戻りしにくい状態に入ったと言われています。ホルムズ海峡の不安は、石油やガスの価格を押し上げ、遠い国の戦争が日本の物価や暮らしに直結することを、私たちに突きつけています。
私は電機メーカーの新入社員だった1973年、第一次オイルショックを経験しました。トイレットペーパーや日用品を買い求める人が店に並び、私が担当していた電機製品も石油製品でできていたため納入価格が毎月のように値上がりしました。当時は「狂乱物価」と呼ばれました。給料が同じでも、物の値段が上がれば、実際の生活は苦しくなります。
当時の日本は高度経済成長の中にあり、企業にもまだ力がありました。また、春闘という仕組みを通じて、労働組合と経営側が賃金について強く交渉し、その結果が多くの会社に広がりました。そのため、働く人々の実質的な賃金の低下は、ある程度抑えられたのだと思います。
今回、再びオイルショックとも言うべき事態が起きていますが、第一次の時とは状況が違います。多くの企業では株主を重視する考えが強まり、また一部の業界を除いて、高い付加価値を生み出し、大きく利益を伸ばす経営が十分にできているとは言えません。物価上昇を上回る賃上げは簡単ではなく、生活者や働く人の見通しは明るいとは言えません。生活環境のさらなる悪化が心配されます。
同時に、私たち国民一人ひとりにも、できることがあります。日本はエネルギー資源の多くを海外に頼っています。だからこそ、電力やガソリンを無駄に使わないこと、冷暖房の使い方を見直すこと、移動や買い物の仕方を少し工夫することも大切です。これは単なる「我慢」ではなく、持続可能な日本を守るための小さな行動です。一人の節約は小さくても、多くの人が取り組めば、国全体の力になります。
 目黒不動尊の水かけ不動明王(筆者撮影)
では、力不足な経営者である私に、今できることは何か。
大きな賃上げは難しくても、福利厚生制度を見直し、社員と家族の負担を少しでも軽くすることはできるはずです。食事、医療、育児、介護、学び直しなど、暮らしを支える仕組みを整えることで、実質的な賃金低下を少しでも和らげたいと思います。
同時に、私は「お不動さん」(目黒不動尊 瀧泉寺)にお詣りし、不動明王さまから各国のリーダーに、緒方貞子さん(元国連難民高等弁務官)の言葉「人びとというものを頭に置かないで、威張って国を運営できる時代ではないのですよ。」* を届けていただきたいと願います。このお寺のすぐ近くで育った私は、子どもの頃から、折にふれてここに手を合わせてきました。私にとって大切な祈りの場所です。
国の利益、政治の都合、権力者の面子よりも、そこに生きる一人ひとりの命と暮らしを第一に考えること。それが「人間の安全保障」という考え方です。この考えが世界に根づき、戦争や対立によって生活者・働く人が苦しむ時代が、少しでも早く終わることを心から願っています。
いみじくも今日5月1日は、世界中の働く者の祭典「メーデー(May Day)」です。政府や企業任せにせず、私たち自身も暮らし方を見直す時に来ているのだと思います。
*『難民に希望の光を 真の国際人緒方貞子の生き方』(中村恵著、2022年平凡社)より
|