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メッセージ from KK2
KK2weekly【メッセージfromKK2】(第960号 2026年9月18日発行)by AVCC
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危険な場所になぜ戻るのか?
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田中純一
一般社団法人ビル減災研究所 代表理事・所長
一般財団法人AVCC理事
防災士
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今年も日本各地で災害が続く。地震だけでも1月に鳥取県東部でM6.4、4月に長野県北部でM5.0、三陸沖でM7.7、十勝地方南部でM6.2、5月に沖縄本島近海でM5.9、6月に岩手県沖でM7.2、山梨県東部・富士五湖でM5.6、そして7月熊本でM7.1と続いた。これに加えて8月には千葉や北陸で豪雨による大規模な水害が発生、9月に入っても東海地方などで水害が続いている。
日本だけではない。世界各地でも、6月にベネズエラやフィリピンの地震、7月に中国重慶の大規模な土砂崩れ、8月にネパールと中国の国境付近で起きた大規模土石流では死傷者と行方不明者は、合わせて数千人に上るとみられる。地殻の変動ではなく40度を超える熱波で今夏ヨーロッパでは高齢者を中心に1万数千人が命を落としたとも伝えられている。公助、共助、自助いずれにしても命を守るのは容易ではない。
さて、災害の危険が迫ると人は当然その危険から逃れようとするが、何故か、その危険に自ら近づくことがあるようだ。洪水が予想される場面で、川や海岸に近づき流されたという事故を記憶している方も多いと思うが、避難が間に合わなかったわけではなく、危険を認識しつつ田畑や漁船の様子を見に行くなどした結果なのだ。上記の熊本地震では、地震から暫くしてショッピングセンターが爆発し大惨事となった。地震直後、施設はルールに従って営業を中止し、在館者を退去させたうえで閉鎖していた。ところが、後始末や自分の荷物を取るために戻ろうとした店舗従業員らに例外的に入館を許したことで多数の死傷者が出てしまった。爆発の危険を認識していたとは思えないが、戻る要求に対して閉鎖の原則は徹底できなかった。
東日本大震災の時にも、津波で亡くなった方の60%が避難場所から危険場所へ移動していたという調査結果がある(※参考:「東日本大震災 津波調査」防災科学技術研究所・自然災害情報室)。ウェザーニューズ社が災害を研究する学者と共に、3,000件以上の生存者への聞き取りで死亡者の状況をも約2,000件収集したものだが、危険場所への移動の末に亡くなっている比率が高いことに驚く。更に時を遡れば、死者100人以上となった1822年北海道有珠岳の文政噴火でも、事前避難した住民が危険場所に戻って火砕サージに襲われたと記録されている(※参考:北海道伊達市「火山の心得(火砕流・火砕サージ)」PDF)。
このように、人は危険な場所に戻ろうとする傾向があるらしい。その理由として、「正常性バイアス」(自分は大丈夫だろうという気持ち)が指摘されている。また、子供や高齢家族(最近はペットも)、自宅や田畑が心配(だから帰りたい、様子を見に行きたい)などを抱えている事情も大きく影響すると思われる。危険場所に戻ろうという強い意思を伴う行動を阻止するのはなかなか難しいが、危険を強調するだけではなく、楽観でもなく諦観でもなく、命があれば今後きっと何かできる、というやや哲学的な説得が功を奏する、といったところかもしれない。
首都直下地震の帰宅困難者対策でもこの危険に近づく行動が想定されている。この行動、即ち無理な帰宅が自身の危険に繋がるだけではなく、群衆が当局による緊急救護活動への支障を招く。このため東京都などでは72時間帰宅が抑制される。勤務中であれば職場の上司がこの帰宅抑制の最前線にいると思われるが、強い帰宅願望に対して適切な対応ができるだろうか。例えば、学校現場では保護者は帰宅困難という想定の下、迎えに来るまで子供を保護する方針が定着しているなど、帰宅願望の背景にある事情は変化しているが、この変化を関係者が理解していれば帰宅抑制へのハードルは下がる。帰宅困難者対策は受入の訓練だけではなく、危険に近づく心理の背景にある事情について日頃から理解を深めておくことも重要だろう。
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田中 純一
一般社団法人ビル減災研究所代表理事・所長。慶應義塾大学法学部卒業後、三井不動産株式会社に入社。ビル事業本部ビルマネジメント2部長、三井不動産ビルマネジメント株式会社専務取締役、三井不動産ファシリティーズ株式会社社長などを経て、2015年から現職。現在、オフィスビルを中心とした減災対策について幅広く執筆・講演活動を行っている。一般財団法人AVCC理事
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