『社労士 大槻哲也の奮闘記』 (大槻 哲也 著)

『社労士 大槻哲也の奮闘記』  ‐挑戦の先に見えるもの

『社労士 大槻哲也の奮闘記』 (大槻 哲也 著) 

著 者:大槻 哲也
出版社:中央経済社
発 行:2012/09
定 価:2,415円


【目次】
 1.社会保険労務士ができること――5分野の視点から
 2.社会保険労務士はトラブルを解決する
 3.社労士の現実とその先にある未来
 4.社労士業界はこう奮闘してきた! その1――社労士業界の変遷
 5.社労士業界はこう奮闘してきた! その2――社労士業界の発展
 6.社会保険労務士のこれから

  • ■社会保険労務士の業務の確立と地位向上のために奮闘

     厚生年金・健康保険など社会保険関連の書類作成、給与計算や賃金台帳の作成、就業規則の作成、労務管理の相談…これらの業務を行う専門家が「社会保険労務士」(以下、社労士)である。本書の著者である大槻氏が社労士として開業した1970年代は、国家資格でありながら社労士の知名度は税理士に遠く及ばず、業務の多くを税理士や行政書士が行っていた。大槻氏が顧客開拓のために文字通り路地をかけずり回って1社1社訪問しても、「うちは税理士に任せているから」と、説明も聞かずに門前払いされることも少なくなかったという。
     社労士固有の仕事とは何か、社労士としての独占業務は何か。どうすれば社労士の社会的地位を向上できるのか。本書は、社会保険労務士として、また業界団体のリーダーとして、長年、社労士の業務の確立と地位の向上に情熱を傾け続けてきた著者の奮闘記である。

  • ■「付随業務」を巡る税理士との「百年戦争」

     社労士業務の確立のプロセスで、最も困難を極めたのが税理士の「付随業務」の範囲とは何かを巡る闘いで、これは「百年戦争」になると言われたほどである。社労士と税理士の士業には、各々の法律によって、他者が行ってはならない業務制限の規定が設けられている。しかし1968年に社会保険労務士法が制定されたとき、日本税理士会連合会は、従来、税理士が行っていた業務の一部、例えば「財務書類の調整のために必要な範囲で社会保険関係の帳簿書類も作成する」といった業務が、社労士に限定されることにより甚大な被害を受ける、ということで陳情を繰り返し、結果的にこれらの業務は税理士の「付随業務」として認められることになったのである。ところが、この「付随業務」を拡大解釈する税理士が増え、「付随業務」とは何かを巡って両士業間にトラブルが絶えなくなったが、この問題については、両士業間で幾度も協議を重ねた結果、「付随業務」の解釈について合意することができたという。

  • ◎著者プロフィール

    1940年京都市生まれ。明治大学商学部卒業後、団体職員として10年余勤務の後、1973年大槻経営労務管理事務所を設立。社会保険労務士法改正に伴い、2003年7月社会保険労務士法人に改組。東京地方最低賃金審議会公益代表委員、東京都社会保険労務士会会長、全国社会保険労務士会連合会会長を歴任し、現在、同連合会最高顧問、日本年金機構運営評議会委員を務める。